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仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
2章:人付き合いの代償
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8話:「図書準備室」

 俺は階段を駆け下りて二階の連絡通路から特別教室棟へと向かった。三階にも通路はあるが、吹き抜けで尚且つ施錠されているため逃げるには向いていない。朝からやっている購買を素通りして辿り着いたのは三階にある図書室だった。この時間帯なので当然人気はない。ただここはいつ何時も人気がないことで有名だった。それは予算がないやら、漫画がないやら、図書委員が積極的に仕事をしないやら複数の要因が絡まった結果であるのだが、そんなこと今はどうでもいい。


 目的地はここであってここではない。


 一礼して貸し出しを管理するパソコンの置かれたカウンター内へと移動する。そしてその中を漁ると見慣れた鍵が現れた。


「お借りいたします」


 緑色のキーホルダーに白いテープが貼っておりそこには図書準備室との文字が書かれている。これはスペアキーだ。代々の図書委員長に引き継がれている伝統的なもの。そしてその役割は文字通り。俺は鍵を手に図書室を去ると、向かって左手にあるドアを見た。ポスターの張り付けてある初見では素通り間違いなしの扉に見えないドア。図書準備室とはここのことである。


 中には長机一つと二つのパイプ椅子、そして大量の移動式本棚があった。前に掃除をしたので埃っぽさはあまりない。時計の針が鳴る音まで聞こえる静寂空間、ここはつまるところ図書委員長限定のプライベートルームだ。学校に個人スペースがあることは非常に心地よい。代々継承されているこの場所は、司書教諭と仲良くなれば利用許可が下りる。俺はその存在を一年時より認知しており、何とか図書委員長に登り詰めたのだ。二年時に委員長になることは異例中の異例だったが、年間読書数で二位のおよそ三倍に値する二三〇冊を読破した実績があったので反対されることはなかった。


 落ち着いてきたので改めて固いパイプ椅子に寄りかかりながら本題について考える。目を閉じてまず脳裏に浮かび上がってきたのはやはりあの画像だった。


 正体はカラオケの受付で俺と蒲須坂が横並びになっている写真だ。一瞬しか見てないが間違いなく昨日のものだと確信できる。大体カラオケまで来てあんな仏頂面をしているのが俺の他にいては忙しそうに接客をしていた店員も浮かばれない。


 誰が盗撮したのかは分からないがそこだけは真実であるはずだ。しかしあの時並んでいたバラエティー豊かな客層に同級生らしき姿はなかったとも俺は思うが。


 とりあえず蒲須坂は今日登校してきたのだろうか。探りを入れようと携帯を取り出したところで始業のチャイムが鳴り響いた。


「あ」


 思わず声が漏れる。なぜなら山前高校は一般的な高校同様、始業時間以降の携帯電話の使用を禁じているからだ。他の厳しい場所とは異なり各自で徹底するだけなので隠れて使用している人は勿論一定数いる。けれどもそれが教師に見つかると無駄としか思えない程長い反省文を書かされた後に自身の両親を呼び出されるから多くの生徒は電源をオフにしていた。蒲須坂はただでさえ目立つグループにいるので恐らく他の模範生徒同様電源オフにしているだろう。


「弱ったなぁ」


 覇気のない独り言が図書準備室に響き渡る。これでは彼女が登校しているのかの判断ができない。


短いので連続投稿致します。正直7話とセットにしても良かったですね。

連載特有の間に慣れられない短編厨()

※短編でも話の間が苦手なので何とかしたいです……

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