78話:「回答」
「できることはない。それだけだ」
長々と屁理屈を捏ねても意味がない。大平下はただぼそりと一言だけを述べた。
「は?」
虚を突かれたように呆然とする国定王。当然だ。これは彼が求めたがっていた答えとは異なる。
「どういうことだ、お前!」
胸倉を掴まれる。ネクタイが引っ張られて息が苦しい。
「そう焦るな。今はこれしかないんだよ」
向こうから拒絶されている状態である以上、下手に動いても関係の改善は望めないことなんて経験から分かり切ったことだった。こいつはそんなことも理解できないらしい。リア充っていいな。さぞかし世界が楽しく見えるのだろう。
「今はって」
「言葉通りの意味だ。今は何をやっても逆効果にしかならない」
大平下が吐き捨てるように呟く。国定王は何か伝えたい雰囲気をしていたが、それっきりアクションを起こすことはなかった。
「分かった。お前の考えは充分理解できた」
少しの間が空いて、急にそんなことを呟いた国定王はせせこさと図書準備室を後にする。心なしか彼の歩行速度がいつもより早いような気がした。
残された大平下はパイプ椅子に座ってひとりため息をつく。状況を考えれば、この問題がこれだけで済むことはないだろう。
「絶対何かやらかすな。あのバカは」
声に出すことで近いうちに起こりうる未来を予測する。暴走機関車と化した国定王と自分の殻に閉じこもってしまった蒲須坂さくら。どう転んでも厄介ごとは避けようもない。
「あー」
埃がかった長机に倒れ込み全身の力を脱力させた大平下は、いっそのこと全部投げ出したい気持ちになっていた。しかしこれは自分が始めた物語だ。逃げだすことなど許されはしない。
「はぁ」
解決方法が見えないなんて理不尽すぎやしないか。世の人々はみんなこの綱渡りを巧みにこなしているなんて。
――なんて馬鹿馬鹿しい。
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2週間以上空けた気がします。リアルで精神をすり減らし過ぎました。




