68話:「昼休みと購買」
昼休みを迎えても、大きな変化はなかった。ただひたすらに空気のように振舞うだけでイベントは何も発生しない。文化祭期間は夢を見ていただけで、現実は非情であるということを受け入れると心にも余裕が出てくる。
教室では今まで見たことのない人数が昼食をとっていた。いつもは他クラスに移動する生徒、体育館や外で僅かな時間すら無駄にせずスポーツに励む生徒もこの場にいる。
大平下は、自分のしでかしたことであるにも関わらず、居心地が悪い。母親お手製の冷食詰め合わせ弁当を食べる気がしないので、クラスの外へと飛び出した。一斉に室内の視線が彼へと集まる。トイレぐらい静かに行かせて貰いたいものだ。
廊下には生徒の姿がなかった。それは購買にも影響しており、売店のおばちゃんは早々に閉店の準備を進めていた。
「何かありますか?」
大平下はいたたまれなくなり、反射的に声を掛けた。きっと生徒の多くが教室から出なくなってここの売り上げは下がっているに決まっている。自由に使えるお金はあまりないが、品物のひとつは買ってあげないといけないといけない気がした。
「品物ならいっぱいあるよ。何を選んでも一律一五〇円だい」
やや地元の方言が混じっているおばちゃん。その視線は大平下が取り出した財布に向いていた。高校生相手の商売なんて少子高齢化の昨今儲からないのだから、この活動も半ば慈善活動のようなものだろう。それでも利益を意識しなければならないほど、現状は厳しいようだ。
「これでお願いいたします」
大平下はずらりと並ぶパンの中からひとつを選ぶ。冷静に考えれば、残り物の末路は廃棄が相場だ。けれども少しでも購買に貢献しようと、チョコやザラメで加工されているものよりかは利益率が高いはずのクリームパンを選択した。単なる自己満であったが、おばちゃんのありがとうという感謝の声を聞くだけでどこか報われた気になる。マッチポンプも甚だしいが、起こした問題の被害の大きさに現実逃避をしなければ自分が持たない。
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気づけば68話まで来てました。お盆ですね。




