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仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
2章:人付き合いの代償
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6話:「登校」

 今のところ高校生活に大きな不満はなかった。強いて文句を述べるとしたら、通学に関して。電車の発車時刻に左右される生活には未だ慣れっこない。ローカル線は一時間に一本とかいうのが欠陥過ぎる。駅のホームが改札から数分は歩かなくてはいけないレベルで無駄に遠いこともどうにかして欲しい。


 茶色と緑の田舎カラーでコーティングされた古めかしい車両、背景に打ち付けただけのコンクリート剥き出しの柱を添えたそれは明らかにヴィンテージものの類。けれども、朝は高校生の群れによって都内もびっくりの満員御礼だ。


 揺られ揺られて数十分、ようやく山前高校の最寄りである朽木駅に辿り着く。名前と反比例して朽木市はそれなりに栄えている。規模で言えば大山市には敵わない。けれども高校の数では圧倒的に多い。その程度には。


 朽木駅はモダンな駅舎が特徴的なのだが、中からはそんなこと微塵も感じ取れない。改札を通過して徒歩で高校まで移動する。駅内にはコンビニや居酒屋が立ち並ぶが、これといった用事は特にないのでいつも通りにひたすら黙々と歩く。何の変哲もない日常。それにしては違和感がある。その正体はどこからか感じる視線。見られているという感覚は人の目に敏感な陰キャの自意識過剰かもしれないが、それにしてはどこか確信めいたものがあった。


「ねぇ」


 道半ばで二人組の女子生徒に声を掛けられる。顔は見たことあるから恐らくどちらも同級生だろう。確かクラスメイトであった気がする。四月も終わりに近づいているのに、まだ名前と顔が一致しないのはどうかしている。だが、興味がないのならば仕方ない。


 少女たちは話しかけてきた癖に、こちらのことなど気にせずに向き合って何かを呟いている。甲高い小声、女は三人集まると姦しいとかいうけれど、こいつらは二人でも充分に不愉快だった。一体全体人を不快にしている自覚とかないのだろうか。


 この様子ならもういいかなどの戯言を宣う必要もないだろう。俺は彼女らを無視して日常の登校ルートをまた歩み出した。朽木駅から山前高校までの距離はおよそ一キロ。朝のウォーキングにしてはやや遠い。極端な坂などはないからあまり辛さは感じないが、雨天時にはバスの利用者もそこそこいる。そんな通学路。高校生の運動能力低下が騒がれる現代、毎日往復二キロ程度はトレーニングどころかウォーミングアップにしかならないだろう。それでも、ウォーミングアップでも何もしないよりは余程いい。


 閑話休題。


 そんなことをぼんやりと考えている間に監獄のように高い塀が見えてきた。ここが山前高校である。現在は偏差値五五の普通科しかない共学高校。一応英語に力を入れており、英検取得者の多さで協会から表彰をされていることだけが教師陣にとっての自慢であるありきたりな県立高校だ。


「おはようございます」


 正門で待ち構えていたのは任侠映画の登場人物にしか見えない生徒指導の厳つい教師と意識高い生徒会。彼らが睨みを利かす服装頭髪検査を潜り抜けて、外階段を利用して二階の玄関からいつものように校舎へと入った。慣れた手つきで自分の下駄箱を探し当てて、ガチャガチャ音を立てながら赤色の上履きを取り出す。赤はいわゆる学年カラーというものだ。一年は緑、三年は青で、色にはそれぞれ意味があるらしい。一年の緑は地域の植物を、三年の青は地域を流れる川の水を象徴するらしい。


 二年の赤は何なのだろうか。


 古い校舎の造りなんてどこも似たり寄ったりだ。玄関を抜けると正面にトイレから洗面所まで一通りの水廻りが揃っている。そこを中心に左手が教室棟、右手が特別教室棟だ。私立とは違ってエレベーターなどないので、毎回根性で階段を用いて三階まで駆け上がる。荷物を持っての移動は少し大変だが、慣れると実は楽でも苦痛でもない。



サボって申し訳ございません!! 連載は本当に難しいです。

プロット上ではまだ冒頭中の冒頭。どうにか頑張ります……。

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