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61話:「異変」

 一年生の展示はどこを見ても模造紙しかなかった。テーマの違いなど全く気にならないほどの体たらく。アンケート結果を書いてあるクラスがまだマシに見える事実に、蒲須坂の不満は頂点へと達する。


「賢くなったと思うわ」


 意訳:つまらない。今年の一年はやる気ない訳?


「良かったな」


 あからさまに爆発寸前だった。対して大平下は冷静に答えることしかできない。


「二階へ行きましょう」


「三年は展示ないぞ」


「は?」


 何一つ上手くいかない現状に、蒲須坂は低い声を上げる。飲食店を展開する三年は、衛生面の都合や金銭を生じさせることから、催し物の最中は展示を取り下げていた。ちなみに、食品は家庭科室にある冷蔵庫へと押し込まれていることから、家庭科室も施錠されているという話は有名だ。


 だが、事実は時によって人を傷つける。蒲須坂はとうとう怒りの臨界点を超えた。


「何もないじゃない!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あら、おかえりなさい」


 結局、大平下たちは二年二組の教室へと舞い戻ってきた。手抜き展示の存在を知ってしまった現在、人力モグラ叩きやヨーヨー釣りなどありきたりなことをこなせる我がクラスが幾分か立派に見えていた。


「二組ってまともだったのね」


 そんなことは断じてない。そもそも我がクラスは恥ずかしいことに停学処分者が二人もいるのだから、まともとは真逆の位置にいるはずだった。


「何があったのかしら」


 蒲須坂の急変っぷりに思わず吉水が声を掛ける。慌てふためいている彼女の姿は物珍しく、大平下はその様子を観察しながら事の経緯を説明した。


「一年の展示が教育的なもので頭が痛かったんだとよ」


「つまり、他クラスがしょうもなかったということね」


 身も蓋もありやしない。大平下の擁護はたった一言で無に帰した。


「ま、残り時間はこの辺で潰す予定だ」


「そう……」


 吉水はこれ以上話すことはないと、目を閉じて受付の椅子に腰掛けた。刹那、教室の裏扉から野太い男の声が聞こえてきた。


「よお、大平下君。元気だったか~」


 その声は、彼女にとって聞き覚えがない。ふと大平下の方を眺めると、彼の表情はすっかりと青ざめていた。


毎度閲覧・ブクマ・いいね等々ありがとうございます。

箸休め・ブレイクタイムは終了です。

またきな臭くなってきましたね……

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