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50話:「大平下の文化祭」

 仕事が終了すると、大平下のやることは完全になくなっていた。どこを見渡しても知らない人だらけの校舎。それは彼にとって苦痛以外の何物でもない。


「早く帰りたいな」


 秘めたる思いは帰宅へと一直線なのだがそれは許されなかった。なぜなら文化祭も一応は授業であるからだ。なにより、大平下としても朝から取り上げられている携帯電話を回収するまで帰宅する気はない。


 現在、大平下は特別棟三階にある男子トイレに籠っている。山前高校自体規模の大きい校舎ではないが、それにしても僻地を訪れる人は彼の他にいなかった。


 大平下とてこんな場所にいるのは不名誉である。そもそも彼は文化祭当日、仕事以外は図書準備室に籠る計画を立てていた。しかし、予想外と言えば予想外。だが想定できない訳ではないことを理由にそれはとん挫した。


「まさか図書室自体が閉まっているとは」


 考えてみれば至極全うな判断である。大勢の人が高校を訪れるのだから、その中に悪意を持った存在が含まれている可能性も考慮しなくてはならない。


「ここにいたのか。伝言を託ってきた」


 無限に思えた退屈の最中、突如男子トイレの扉が開く。現れたのは氏家だった。


「誰から?」


 どうしてこの場所が分かったのかなんて大平下が問うことはない。きっと氏家は貴重な文化祭の自由時間を犠牲にして探しに来てくれたのだろう。


「吉水。彼女は今保健室にいる」


「なぜ?」


「疲労。無理のし過ぎって訳だ」


「……それで、内容は」


「劇が行われる時、彼女の代わりとしてクラス展示の見張りをしてほしいとのこと」


「人使いが荒いな」


 大平下は苦笑いをした。氏家も自分から話しておいて微妙な表情をしている。


「引き受けるのか?」


「ああ、俺はお前と違って劇の出番がないからな」


 ここで吉水に恩を売っておけば、何かあった時、役立つかもしれない。そうはいかなくても、自らがシナリオを手掛けた陳腐で悲惨な劇の一部始終を観なくて済む。


「自分の意志で決めたのなら、俺は干渉する気などない」


 氏家はそう言い残して男子トイレを後にした。


祝!50話。 ここまで続けてきたのは皆様のおかげです。

いつも閲覧・ブクマ・いいね等々ありがとうございます。励みになっております。

それにしても、記念すべき回をトイレで消費するとは自分事ながら情けない……

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