46話:「文化祭準備期間①」
方向性が定まってからの大平下は非常に素早かった。シナリオ制作において、主要テーマを決めることはゴールを見つけることと相違ない。結果として彼は、締め切り当日に滑り込む形でシナリオを仕上げることができた。徹夜でコピー機を稼働させ、何とか完成した紙束は努力の結晶としてきらり輝く。
「こんな感じで良いか?」
「――確認するわ」
放課後いつもの教室、変わらない面子。けれども、今日はまた一段と騒がしかった。
その理由は単純である。なぜなら、明日から遂に本格的な文化祭準備期間へと突入することとなっている大山高校では、放課後作業の解禁日を迎えていたのだ。期間中、通常授業は午前中で終了するという破格の待遇があっても、所詮五日間ではやはり時間が足りない。各々は自分が満足するために使える時間は惜しみもなく投資する気でいた。
「そこ、飾りつけは前日まで出来ないから設置だけで済むようにしておいて」
だが、高校生ともなると社会で生きるための役割というものが生まれてくる。二年二組のメンバーは、大半が指示を受けないと動けないタイプの人間だった。
「ウジ虫、サボるな!」
故にリーダーの負担は想像以上に大きくなっていくが、それはまた今後のお話。結局校内放送で帰宅を促されるまで、クラスメイトは皆作業に没頭していた。
「お疲れ様」
時は流れて午後七時。校舎の人工的な灯りだけでなく、街を見守る峰々の間から顔を出していた夕陽もすっかりと沈み、辺りは闇に覆われていた。
当たり前のように最後まで残っていた大平下は、教室の鍵をひとりで返還し、人気のない下駄箱で帰宅しようと靴を取り出そうとしている。
そこにタイミング良く居合わせた吉水が声を掛けてきた。
「先に帰らなかったのか」
「ええ、あなたをひとりにするのはどうかと思っていたから……」
「そんなこと気にしているのなら仕事量を減らしてくれ」
「無理」
満面の笑み。それは大平下にとって何よりも恐ろしいものであった。
「ところで、劇の方は順調なのか?」
「それなりに。みんな意外と演技は上手かったわ」
まるで他に優れているものはないような言い草。それに対して大平下は否定することもなく会話を続けた。
「人間関係を構築するのが得意な奴らは面の皮が厚いからな」
「関係あるのそれ?」
「大ありだろう」
「そう……」
いつも閲覧・ブクマ・いいね等々ありがとうございます。
色々ありまして、ようやく手を付けることができるようになってきました。
ここから文化祭編を文章におこしていくので、取り敢えず完成部分のみ先出ししておきます。
宜しくお願い致します。




