44話:「抗議の果てに」
特別教室棟がまた一段と騒がしくなったかと思えばすぐに静まり、幾ばくかして大平下たちは事の顛末を知ることとなった。窓から見える一面だけで分かる結論を述べるとすれば、抗議運動はあっけなく退けられたようだ。
その証拠に中心人物たちは野次馬と監視役の教師陣で構成されたギャラリーに取り囲まれて、漫画に出てくる英雄みたいに廊下を凱旋している。
「よお、お二人さんは放課後デートか」
やがて二年二組前へと辿り着いた集団の中から一際目立っていた男子生徒が、室内にいた大平下と吉水を見つけて軽口を叩き出した。
「いいえ、ただの文化祭実行委員会としての話し合い。あなたこそ、こんなに大勢引き連れてどうする気なの?」
「残念ながら、もうどうにもなりやしないな。この状況を見て分からないか。予想はしていたが、見事なまでの惨敗だ」
声を掛けてきたのは旧国定グループメンバーで名を氏家といった。彼は中でも極めて特異な存在。
「そう、まあそんなものだと思っていたわ。主導者がウジ虫ではね」
吉水の口ぶりからもその理由が伺える。なぜなら彼は高校入学以前から彼女をとっかえひっかえしていることで有名なプレイボーイだった。
「そんな言い方ないじゃん」
「いつも通りでは?」
当然、委員長を担うような吉水とは相性が悪い。そもそも、彼女があの時大平下に声を掛けてきたのは、氏家を含めた旧国定グループの面子が頼りなかったからだ。
「結局どうなったんだ」
しょうもない舌戦に大平下が割り込む。彼としては失敗に終わった活動内容なんてどうでもよかった。しかし、この調子ではいつかは巻き込まれる未来がやってくる。しからば先回りして動くべきだろうと考えていた。アイデアなら思いつかないこともない。
「さっきもいっただろう。惨敗だ」
「その詳細が訊きたい」
「そう言ってもなあ」
氏家はかったるそうに天を仰いだ。そして近くにあった適当に椅子をかっさらって着席し、ゆっくりと話し出す。
「暴力沙汰であることが原因だった」
彼曰く、教師陣は概ね今回の事件について国定に対して同情していると。それは国定と多田羅の行いの差である。しかし、中身が暴力沙汰であることから、彼らは表立って国定の救済には傾けなかった。
「要するに余熱が冷めるまではどうしようもないということ」
「そうでもない。寧ろここまで揃っているのなら、俺は好条件だと思っているが」
万事休すだと両手でお手上げのポーズを見せる氏家とは逆に、大平下は自身満々な様子でいた。
「何かアイデアがあるのか?」
「なければこんな言い方はしない」
自然と大平下の方へ周囲の視線が集中する。大観衆に見守られながら、彼は自身のアイデアをすらすら語った。それは誰もが思いつけども実行を躊躇った諸刃の剣。
「劇で今回の事件をやればいい」
瞬間、吉水の表情が曇ったのを大平下は見逃していなかった。
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本来はここまでで43話の予定でした。




