43話:「騒がしい放課後」
放課後、例の集団が校長室に乗り込んだとの噂が校内を席巻していた。屈強な運動部を携えての襲撃は見方によっては脅迫とも取られる行動で、教師陣もその対応に慌てふためいているようだ。
大平下は野次馬に取り囲まれている特別教室棟ではなく、二年二組の教室内から一連の騒ぎを見守っていた。彼の正面にはいつものように吉水がいる。
「それで、シナリオは書けたの?」
「いや、全く」
彼らはいつものように教室で話し合いをしていた。国定の処遇は彼らにとってどうでもいい。それ以上にクラスメイトから停学者が出るかどうかが問題だった。
「まあ、仕方ないわね。何でもいいからタイトルとあらすじだけでも固めてくれないと困るからお願いしたいわ」
「ああ、何とかするつもり」
「それにしても……」
吉水の視線は特別教室棟の方を向いていた。いつも落ち着いている彼女といえども、多くのクラスメイトが関わっている今回の動静はやはり気になるようだ。
「どうもこの学校は騒がしすぎるのよね」
「何ていうか土地柄なんだろうな……」
大平下は呆れたように呟く。小中高といざこざに揉まれてきた彼にとって、この程度の混乱は事件でも何でもない。ただこんな出来事が頻発すること自体、普通ではないと思い始めていた。
「ところで、さくらについてなんだけど……」
沈黙が教室内を支配しかけたところで、吉水がまた違う話題を振ってくる。今度は蒲須坂について。すっかり存在感を薄めていた彼女は例の一件以降、相変わらず学校に来ていなかった。
「やっぱりダメそう」
「……仕方ないな」
大平下はいつか本人から聞いた話を思い返しながら言った。蒲須坂には明るい立ち振る舞いとは裏腹に、かつて暴力的ないじめで付けられた心の傷跡があった。そしてそれは何の因果か例の騒動で再び開いてしまった。国定グループに所属していたはずなのに、彼によって無意識的に傷つけられる。こんなことが許されていいのだろうか。
「文化祭には来られると思うか」
「どうだろう。大平下君次第じゃない」
「俺次第?」
「当たり前よ。他に誰がいるの」
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毎度の繋ぎ回です。連載形式だとこういうところが難しい……




