42話:「署名活動」
「おはようございます」
翌日、眠気を押し殺して登校した大平下が二年二組の教室に入った瞬間、爽やかな挨拶と共にあまり接点のない女子生徒から一枚の紙を手渡された。直筆の文字をプリンターで印刷した文書。ご丁寧に署名欄まで用意されたそれは、国定の停学期間を短縮させるために制作した直訴状だった。
「こんなものどうするんだ?」
大平下は大まかな内容をざっと確認し、渡してきた女子生徒に質問する。
「校長先生に送り付ける予定です」
女子生徒は真剣な声色で答えてくれた。どうやら思川の噂話は本当だったらしい。
「そんなことしても意味なくないか?」
「意味なくてもやるんです」
「どうして」
「それは……国定君がこのような事態を起こしたのにはきっと理由があるはずだから」
「要するに、例の件には何か裏があると考えている訳か」
「そういうことです」
言いながら女子生徒は書類をまとめていた。まだ早朝にも関わらず、既に署名は相当数集まっているみたいだった。
「参加者は何人くらいだ」
「今は一〇人くらいですね。でもサッカー部などは協力してくれるらしいですよ」
「なるほど」
「ところで、大平下君は何か知っていたりしますか」
「ん?」
大平下は唐突な逆質問に意表を突かれたような反応を見せる。その隙を女子生徒は逃さなかった。
「惚けないで貰えますか? あなたが図書準備室で国定君と話していたという情報は、噂としてみんなに伝わってきています」
「何のことだ?」
「例の件のことです。あなたはその前日、国定君と会っていたはず」
身構えていない状態での詰問に大平下は動揺する。あの時何があったっけ。焦りと困惑の中、大平下は図書準備室での出来事を呼び覚ましていた。
「ああ、確かに会った」
「何を話していたんですか?」
「小金井を貶めた犯人についてだ」
小金井という名前が出たことで、聞き耳を立てていたクラスメイトが一斉にざわつく。しかし、大平下の記憶にこれといった重要な情報はなかった。
「小金井さん? やっぱり彼女が関わっていたんですか」
「直接のことは俺も知らない。ただ、国定は小金井のアレをばらした存在を探していたようだったな」
「……それで、他に何か?」
「それ以上は何もない。テスト期間中ということもあったから、俺は協力依頼を断って話は終了した」
「そうですか……」
女子生徒はありがとうございますと感謝を述べてからその場を立ち去った。大平下は一連のやり取りを見送ってから席に戻って署名欄に名前を書く。そして、その紙を彼女の机に置くと、改めて自分の椅子に座りなおしてそのまま突っ伏した。
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気づけば42話です。文化祭編は4章の反省としてなるべく丁寧に書いていますが如何でしょうか。
また、未だに連載の書き方が身に付いていませんが、こんな拙い文章でも読んでくれている方がいらっしゃるから何とか続けております。今後とも何卒宜しくお願い致します。




