34話:「早朝の惨劇」
中間テスト最終日。昨日のことが少しばかり気がかりであったものの、俺は蒲須坂や吉水に対して話すこともなくいつの間にか朝を迎えていた。現在、満員電車に乗り込んで朽木駅に辿り着いてから一〇分と幾ばくか。今では日常と化したウォーキングもこう快晴だと悪くはない。慣れ親しんだ田んぼ道を歩いていくと、正面に古びた校舎が見えてきた。
いつも通りボロボロなそれを眺めていると、妙な違和感に気がつく。
「あれ? 人だかりができているような……」
位置としては正門付近。遠目にはよく分からないが、やたらと学生が密集しているように見えることだけは確かだった。
「服装検査か?」
そんなことを考えつつ、野次馬気分で人だかりに向かっていく。祭りにでも参加するように、軽い気持ちで正門に辿り着いた俺はその場の出来事を見て思わず絶句した。
「は?」
面前に広がっていたのは赤色の液体。それが血であることは疑いようがなかった。そしてその中心人物にまた驚かされる。
「マジかよ……」
そこにいたのは国定と猿だった。状況は以前と全く変わらない。いつかの時みたく国定が猿に馬乗りになっている。しかし、今回ばかりは無事では済まなかった。
「……やめっ、ぐふっ」
あの日直接振り下ろさなかった拳は、現在こうして躊躇することなく猿の顔を殴打していた。これ以上彼の顔が変形しないように数人がかりで止めようとしている教師や、恐怖のあまり叫んでいる女子生徒を無視して、国定は怒りに身を任せている。承認欲求を満たしたいがためにその蛮行をカメラで捉えている異常者もいた。
「お前が……お前が……」
ただひたすら繰り返される暴力。そこには憎しみの感情以外何もなかった。動機は聞くまでもない。必死になって取り押さえようとする体育教師やゴリラみたいな体型をした運動部の生徒は彼に跳ね除けられて全く役に立たなかった。
「……いい加減に」
口から出血しながらも反撃のチャンスを伺っていた猿だったが、やがて気を失った。その顔は白目を剥き出しにしたまま固定され、惨めさが浮き彫りになっている。下半身からは血ではない液体がだらだらと洩れ出していた。
「はぁ、はぁ」
国定は猿が気絶したことを確認してから振り上げてきた拳を止める。辺りを埋め尽くす咽返るような悪臭、真っ赤に染まった自身の両手は彼を一瞬で正気に戻した。
「あぁぁぁぁぁぁ」
現実を理解した国定は聞いたこともないような声で発狂する。起こした罪の重さは彼の人格を破綻させるのには充分だった。
いつも閲覧等々ありがとうございます。33話少し加筆しました。
何となく察していた方もおられると思いますが、展開の描写にしこたま苦労をしております。
端的に言えば文章が全く思いつかない…… それでもやりたかったことはできました。
後で大幅加筆と修正を加えることを前提に、取り敢えず今は駆け抜けます。




