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仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
4章:人間関係は複雑怪奇
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30話:「放課後と噂」

 二時間目の数Bにはやや苦戦を強いられたが、次の古典は暗記した内容そのまま。大したことはなかった。中間テストは全体的な科目数が少なくこれで放課後となる。時間としては午前中いっぱいだった。


「すまん、遅くなった」


 貴重な調整時間、俺はさっさと帰宅したい気持ちを堪えて生徒会室へと足を運んでいた。そこには一方的な約束を押し通してきたいつもの面子がいる。


「遅い」


「だからそう言った」


「くだらない争いは時間の無駄にしかならないからさっさと座ってくれないかしら?」


 蒲須坂と吉水、そして何故か国定が冷えたパイプ椅子に腰を下ろしていた。無言でただこちらを見つめている彼の目からはいつもの生気が失われている。一ヶ月前までは完全に逆の立場だったなとかそんなことを思い浮かべ、空いているパイプ椅子に着席すると、ヌルっと会議が始まった。最早この感覚に慣れてきている自分が末恐ろしい。


「取り敢えず忙しいのに集まってくれてありがとう、感謝するわ。今回の主題は私」


 言いながら、吉水はスマホを四人の真ん中にあるテーブルに置く。そこには見覚えのない写真が表示されていた。またか…… 俺には嫌な予感が拭えない。


「送り主についてはノーコメントでお願い」


 写真は、夜に私服の女がビルから出てくる時を捉えていた。内容がそれだけなら問題ない。けれども、その子の正体と横にいるおっさん、そして何よりも場所が非常によろしくなかった。


「これって……」


「おそらく、ラブホテルだな……」


 言い淀む蒲須坂に、付け足す国定。俺たちはその一言で全てを理解した。これは今までの写真とは比較にならない最悪なものだと。


「言うまでもないけれど、これは小金井さんね」


 吉水が落ち着いた声で話す。彼女だけは事前に情報を知っていたため驚いていなかった。


「……」


 重苦しい雰囲気は一度生み出されるとそう簡単には切り替わらない。俺たちは暫く黙り込むしかなかった。事は予想以上に深刻だった。


「なぁ」


 少し間を置いて発された国定の声に皆の視線が集中する。それに一切萎縮することなく彼は語り出した。この辺はリーダーの資質が垣間見える。


「これが小金井さんって確定した訳じゃないよな」


 ……訂正。彼には現実が見えていないようだった。敢えて見ないようにしているのかもしれないが、現実逃避なら自宅でして貰いたい。


「残念ながら、送り主の子曰く小金井さんではあるみたいよ」


 吉水が残酷なまでに手厳しい真実を告げる。僅かな希望すら残さない。けれども彼女はこれで誠心誠意だった。なぜなら、彼女の誠意とは持っている情報を包み隠さず伝えることに他ならない。この会議はそれが目的で開催されている。


 しかし国定は諦めようとしなかった。これもまた性格だろう。いつか語った彼の理想は簡単にエゴへと変換される。その悪い部分が盛大に溢れ出ていた。


「それは誰なんだよ! 名前も知らない奴のことなんて信じられないに決まっている!」


「詳細は話せないけれど、クラスメイトの誰かよ」


「……」


 吉水は、匿名でクラスメイトから情報を得ていたことを話した。しかし、俺たちにすら正体が分からないように彼 (彼女かもしれない) の呼称を提供者とした。


「提供者は匿名を条件に、私たちが退会させられたクラスLINEの情報を流してくれた。これだけでも感謝するべきじゃないかしら?」


「……」


 口論はいつかのように一瞬で幕を閉じた。吉水の正論に国定は何も言い返せない。


「分かったよ。情報ありがとう」


 苛立ちを隠し切れないでいた彼はそれだけ述べるとこの場を去った。残された俺たちもこれ以上の情報がなかったため、話し合いをここでお開きとした。

祝:30話! 皆様のおかげです。今後ともよろしくお願いいたします。

さて、今回の話ですが個人的には正直駆け足過ぎて納得しておりません。

やり取りどうでした? 

ここはいつか修正する際には確実に変更する部分になると思います。

けれども、今それをしていたら投稿できないというジレンマ……

取り敢えず、思いついたら変えていきます。

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