28話:「番外編③(吉水のGW)」
GWも終盤へ近づくにつれ、各地の交通模様が話題となっていく。東名高速道路○○IC付近では十キロの渋滞だとか、新幹線は予約が取れないだとか、空港では海外旅行に出かけた人々が続々と帰国の途に就いているなどと言う話を聞くたびに、どこへも出かけていない自分に対して虚しさが募っていく。
私は最終日ぐらい思い出作りでもしようと、自室を飛び出して家族共用スペースに放置しておいたスマホを回収する。先程までラジオを流しながら勉強に集中していたはずなのに、今はもう中間テストの不安など頭にない。
階段を昇りながら、レシートみたいに長い連絡先をスライドして眺める。当然のことだが、表示された名前の多くは目下試験を控えた高校生のものばかりだ。
私はテストに本気を出す訳でもなく、赤点を取るラインでもない都合の良い人材がいないか血眼になって探し始めた。見つけ次第すみやかに連絡を取らなくては、休みは終わりを告げてしまう。
「はぁ」
自室に戻り改めて落ち着いたところで、一通り名前の確認をした私の口から思わず溜息が漏れた。分かり切っていたことではあるものの、こんなにも条件に合う同級生がいないとなるとショックは大きい。
「仕方ない」
私はベッドの端に腰掛けて別のプランを考え出す。そもそも、普段から予習復習をしっかりとこなす人はテストも真面目に取り組むものである。つまり今回の提案は最初から無茶でしかなかったのだと、話を切り替えようとして。
「あ……」
諦めかけてとうとう寝転んだ私は、仰向けの姿勢となった瞬間にある人物を思い浮かべた。それは最近仲良くなった変わり者。――大平下優。
「何で気づかなかったのだろう」
原因は単純なものであった。私は彼の携帯電話の連絡先を知らない。何かあった時はいつもさくらが仲介をしてくれたからだ。
すぐに彼女と連絡を取る。ちなみにさくらは一夜漬け赤点回避派の人間であるため、候補からは真っ先に外れていた。
「何? こんな時間に」
ひょっとしたらまだ起きていないという懸念もあったが、三コール目で聞き慣れた声がした。如何にも眠そうな声は目覚めたばかりか、はたまた徹夜か。
「大平下君と連絡が取りたいの」
その一言で、さくらは理由を尋ねることもなく私にパソコンを開くよう促した。どうやら大平下君を同じzoomに誘導してくれるようだ。
「パスワードとIDをLINEで送るから、じゃあ切るよ」
「ありがとう」
無駄のない動き。さくらはこうしたツールに詳しかった。Zoomというアプリの存在なんてまだ世間的には知られていない(未曾有のパンデミックは彼女たちがそれぞれの進路を歩むことになった数年後に訪れる)
「いきなり何だ」
少しして、画面の奥に見慣れた顔が集結した。私と大平下君、そしてさくらだ。追い込みを掛けなくてはならないはずの彼女もなぜかミーティングに参加している。
「ごめんなさい、大平下君に用事があったの」
いぶかしむ顔をするこの場唯一の男子に私は話しかけた。ラグがあるのか、ワンテンポ遅れてレスポンスが返ってくる。
「用事って」
「今から遊びに行かないかしら?」
狐につままれたかのような表情のまま固まる大平下君。気のせいでなければ、さくらも動揺を隠し切れないでいるように見える。
「どんな風の吹き回しよ」
沈黙を破ったのはさくらだった。相当焦っているのか、しぐさに回線速度が追い付いていない。
「いや、何となく」
私は真意を避けて答えた。ここで正直に話すことは、さくらの成績を晒すこととなんら変わりない。
「何となくって……」
うーんというポーズを取ってさくらは考え込む。その様子はまるで小動物のように愛らしい。けれども彼女にこの理由は多分だけど一生解けない謎である。
「良いけど、どこ行くんだ」
徐に口を開く大平下君。私は事前に考え込んでいたアイデアを述べる。
「とりあえず大山駅ビル前集合で」
笑顔の私とは対照に、血の気が引いて青ざめるさくら。何かに勘づいたようだ。
さくらは、Zoom越しでスマホを起動すると電話の相手にこう叫んだ。
「あんた、あの日のこと話したわね!」
受け手は勿論、大平下君。二人のデートを参考にさせて貰いました♪
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さてさて、ここで番外編となるGWは終了です。
何とか4章分のアイデアと今後の方向性は定めましたので、
ここからは巻きで行ければいいなぁ(願望)
話は変わりまして……皆様、リアルの大雪(2023年2月10日は関東でも積雪)は大丈夫でしたか?
私は関東民なので、雪が降っただけで大騒ぎ。何と休みを取りました(笑)




