表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
3章:それでも人はひとりではいられない
23/86

21話:「話し合いは次第に内戦へ」

環境を変えたところで直ぐに妙案が浮かぶ訳ではない。進歩のないものには平等に飽きが訪れる。話し合いとて例外ではなかった。


「そういえば、大平下君はどうしてさくらと関わるようになったの」


 煮詰まったローテーブルを囲う三人の中で、最も沈黙を不得手としている吉水が主題から逸れた話題を提供してくる。彼女以外が持ち掛けてきたら先程のような集中砲火を浴びること間違いなしの余談。合理的な性格から大きく外れた行動に驚いていると、蒲須坂が答えを述べた。


「趣味」


 訂正。それは答えではなく誤解だった。どうしてそんな返しになるのか。蒲須坂の方に視線を向けると、彼女は目でこう言ってきた。


「メモ帳の件を隠してあげるんだから感謝しなさい」


そういえば弱みを握られていたんだっけ。あの日、彼女が早々メモ帳を返してくれたため、俺はその件についてすっかり忘れかけていた。最もそれ以上の出来事がここ数日で頻発していることが重要事項の忘却原因ではあるが……


保持契約を交わした訳でもないのに、律儀に秘密を守り通してくれる蒲須坂に感謝をしつつもしかし、俺は彼女が吉水相手に嘘を貫き通せるとは思っていなかった。現に勘の鋭い吉水は、意味深なアイコンタクトから何かを察して探りを入れようとしてくる。


「へー、そんな共通趣味なんて持っていたんだー。それって何?」


 生徒会室でも聞いたことのない上機嫌な声からの急降下。彼女的には自分だけが蚊帳の外にいることが気に食わないみたいだった。そもそも噓が嫌いな性格であることは今更語るまでもない。


「ど、読書……」


 苦し紛れな蒲須坂の弁明。俺は雰囲気の悪化を予測して俯く。追及の手は直ぐに回ってきた。


「どんなジャンルを読むの?」


「……ジャンプ作品とか?」


必死の問答。蒲須坂はこう答えたが、残念ながら俺はそのレーベルは某海賊ものしか読んでいない。


「へー、大平下君もそういうの好きなんだ。ま、年齢的には妥当だよねー」


吉水はどこか小馬鹿にした口調でこちらを一瞥する。おそらく彼女は一連のやり取りからこの話が嘘であると確信しているのだろう。こういう時ムキになって、強気な反応をしてはならない。なぜならそれはこちらを誘い込むための罠に過ぎず、引っかかれば最後。負け戦になること不回避だから。


 だが、蒲須坂は地雷を容赦なく踏みつけた。友人の性格など、とうの昔に把握しているに違いない。それよりも、人の秘密を守ることを優先した彼女の行動からは、何か信念めいたものが感じ取れた。俺の過去なんてそこまでするものでもないが……


「言っていいんだね。じゃあ遠慮なく……」


 背景を知る由もない吉水の言葉を以て開戦の火ぶたが切って落とされる。彼女は開幕早々目を合わせようともしない俺に口撃を仕掛けてきた。その声に躊躇はない。


「大平下君、嘘はないよね」


 敢えて効果音を付けるならギロリとでも言うべき視線に照準を定められる。それは蛇睨みのようなもので、目が合ったものは身動きすら取れなくなる(弱者限定)。


 今回のように敵が複数いる場合、弱そうな相手から崩していくのは何事においても常套手段だ。俺は瞬時に意図を理解して悲しくなったが、すぐに対抗策を練り上げて、あえて茨の道を突き進んだ。


「ある」


 冷静に問い詰めていた吉水の顔に戸惑いが生まれる。ちらっと蒲須坂を見ると彼女は迷いを通り越して怒りの表情でこちらを睨みつけていた。当然だろう。この返しは蒲須坂の配慮を台無しにするものである。


「「どういうこと」」


 ふたりの平常よりも低く鋭い声が重なり合う。俺は、説明のため仕方なく前を向いた。


「共通趣味の点が嘘。俺は少年誌よりも青年誌派だ」


 それに蒲須坂は本なんてまともに読みやしない。そう言いながら彼女の方を指差すと、蒲須坂は指なんて食いちぎってやると言わんばかりの形相をしていた。


「どうして嘘なんかついたの?」


 俺の話を聞いた吉水は反射的に蒲須坂を目で捉えて質問する。その態度は今朝国定に向けられたものと同じであった。


「それ……「俺が悪いんだ」」


 俺は悩む蒲須坂に割り込んで回答した。ここを引き受けなければ完全な見殺しである。


「あの時もそうだけど、説明に不足があった」


 あの時というのは生徒会室でのことだ。そこでは聞かれていないことは言わないスタンスでメモ帳の話をしないでやり過ごしていた。


「不足とは?」


 吉水は鉄仮面を崩すことなくこちらの様子を伺っていた。彼女は言葉以外の情報からこれが真実かどうか見抜こうとしているようだ。


「俺の過去話だ。詳細はできれば話したくないから割愛するとして、それを蒲須坂が偶然知ったことでこういった関係となった」


「要するに脅されてということで?」


「情けないながらその通り」


「……そう。ようやく違和感がなくなったわ」


 おかしいと思っていたわ。そう呟いて吉水は笑う。蒲須坂からもこちらに向けられていた突き刺さるような嫌悪感がなくなっていた。


遅くなってしまいまして申し訳ございません。書ける(掛ける)言葉が見つかりません……

とりあえず2月中に4章まで進めたいと思っております。こんな愚か者で宜しければ今後とも宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ