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仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
3章:それでも人はひとりではいられない
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19話:「似た者同士」

「あなたはどう思った?」


 蒲須坂の姿が見えなくなった途端、吉水は独り言のように呟いた。だがその視線は確実にこちらを捉えている。まるで何かを試しているような。ことと次第によってはお前を殺してやるという覚悟さえ込められている顔つきは、大平下の一挙手一投足を見逃さない。


「取り敢えず、想像の範疇は超えなかったな」


 そのため生徒会室でのやり取りを思い出して、俺は率直な感想を言い渡した。


 だがしかし、吉水は眉間にしわを寄せて不機嫌そうなオーラを放つ。どうやらこれは彼女の納得いく回答ではなかったようだ。語気を強くし、簡潔に、矢継ぎ早に質問を続ける吉水。俺は反射的に問いを処理していく。


(なに)(ゆえ)


「経験」


「どんな」


「嫌がらせ」


「具体的には」


「暴力」


「いつ」


「昔」


「詳しく」


「中学時代」


「……そう」


 会話はそこで打ち切られた。吉水は一通り聞き終えると、左手を口元にやり、首を傾げて思案し始める。それはあまり見慣れない年齢相応のお嬢様みたいな仕草だったが、なぜか不思議と自然にみえた。


「……似たもの同士だったのね」


 客観的な事実を積み重ねて、やがて結論に達した彼女はポロリと呟く。けれども、それはあくまで推理でしかなかった。


「残念ながら少し違うな」


「……」


「何て言うか、完全に真逆なんだ。故に俺はこいつとの関係を継続したんだと思う」


 これも今にしてはというレベルの話ではある。しかし、俺は蒲須坂の過去を知ったことでその違和感を確実に解消していた。そしてそれは同時にまた新たな疑問を浮かび上がらせていく。いや、少し違うか。どちらかと言えば過去に保留していた論理の解を補填していくとでもいうべきだろう。なぜなら。


「真逆とは?」


「そのままの意味」


 なぜなら、それはすっかり忘れ去られた最初の疑問。


 暗黒の中学時代。俺が周りを呪っていた日々の中、唯一信じていた英雄はこう言った。


「――超人を目指しなさい。あなたにはそのセンスがあるから……」


 この台詞は今でも自身の生き方における最大の信念である。けれども蒲須坂の存在はそのアンチテーゼであったのだ。彼女は人間関係に苦しめられても前を向き続けていた。これは孤独を貫いて孤高にまで辿り着いた時、超人になれると教えてくれた英雄の理論に反している。


「だから知りたいんだろうな」


 俺は噛みしめるように小声で呟いた。反応してもらう気なんてさらさらない。纏まったことを忘れないように声に出しておきたかった。ただそれだけのことである。


「……分からないわ」


「だろうね。でもそれでいい」


「……なんで」


「知る必要がないから」


 それ以上の回答は見つからなかった。というのも、それが全てなのだから仕方ない。


HAPPY BIRTHDAY TO ME ――実は1月28日生まれです。自分へのご褒美でずっと時間を見つけ次第やりたかった『魔法使いの夜』リメイクをやってました。面白かったので皆様も是非プレイしてみては?

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