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仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
3章:それでも人はひとりではいられない
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15話:「生徒会室」

 吉水が話しかけてきたのは昼休みだった。彼女は昼食を済ませて早々逃げ出そうとした俺を一言で呼び止めると、そのまま付いてくるように促した。


 逆らう理由もないので、おとなしく従って後を追う。二年の教室前廊下を通り抜けて階段を下り、辿り着いたのは生徒会室だった。彼女は生徒会役員でもあったのだ。


「今日は特別に借りられたからゆっくりと話しましょう」


 制服のポケットから鍵を取り出して手慣れた様子で解錠すると、普段はお目にかかれない選ばれた人々の部屋が見えてきた。長机に複数のパイプ椅子、ここまではプライベートスペースと変わらない。しかし、稼働していない石油ストーブやクッションなどやたらと備えられている防寒グッズはその不遇な扱いを象徴していた。


「日当たり悪くてごめんなさい。でもここくらいしか、他人の目を気にせずにふたりで話すことのできる場所はないから……」


「いえいえ、気にしませんよ」


 図書準備室の存在を知ったら会話どころではなくなりそうなので、無難な返しをして場を和ませる。言葉遣いは非常に丁寧だが、本日のご機嫌が最悪であることは想像に難くない。


「それでは……」


 吉水は俺が腰掛けたパイプ椅子の正面に座ると、しっかり目を見て話しかけてきた。眼圧の強さに俺は視線を下へ移動しそうになったものの何とかこらえる。


「あなたの知っていることを話して下さい」


 こいつは国定とは訳が違っていた。おそらくだが、一つの隙を突いて十個攻撃をしてくるタイプだろう。そして今は冷静に振舞っているが、俺との相性は恐ろしく悪いはず。


「知っていること? とりあえず日曜日の話からでいいか」


「許可なんて遠回しなことは必要ないので、さっさと話してくれませんか」


 こうした合理的なところは似ているが、彼女の導線は友人のためという部分の一点張りなのだ。この辺は万人に対して平等な国定とは少し異なるが、誰かのためにという面ではあまり変わらない。根っからの性格の良さはどこまでいっても自分のことしか考えられない俺とは対照的だった。


「それは彼女にLINEで大山駅ビル前に待っているよう言われたのが始まりだった」


 現に都合の悪いことは語っていない。通じるならこれで良いのだ。


「クラスLINEには入ってなかったのに、さくらの連絡先だけは知っているんですね」


 じーっと半目で睨まれる。その奇妙な威圧感に俺は慌てて言い訳をした。


「理由はノータッチで頼む。本筋にはあまり関係ないから」


 こういう時、嘘をついてはいけない。なぜなら彼女のような性格はそれを見抜くことが世界で一番優れているのだから。なにより、嘘は物事を拗らせる原因となる。


「そ、じゃあ聞かないでおくわ」


 発言が一々刺々しい。繰り返すが、彼女の導線はあくまで友人のために。そこを意識して正直に話せば関係ないことは流してくれるはず。


「了解、続ける」


 大方の説明を終えると、彼女は全てを理解したかのように頷いて質問してくる。


「それで、あなたはどうしたいの」


「どうって」


 占い師のような抽象的な質問。思いつく答えはひとつしかなかった。


「……戻って来てほしいかな?」


 鉄仮面から僅かに笑みが漏れた。

閲覧ありがとうございます。 話し合いしてばっかり…… シ〇ゴジラかな?

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