13話:「話し合いの末に」
「想像つくだろうが、主題は蒲須坂についてだ。俺はお前らの関係性になんて微塵も興味ない。けれども、こんな騒ぎとなってしまったからには彼女の精神面が気になっている」
国定はポケットから徐にスマホを取り出すと、LINEのトーク画面を見せつけてきた。そこには例の写真の拡散された経緯がはっきりと載っていた。
俺は最初に貼り付けた奴の正体を知ろうと思ったが、アイコン且つハンドルネームから本人を見分けるのは困難であった。故に質問をする。
「写真を流出させたこいつは誰だ?」
「……」
正義感に燃えているはずの国定は答えに窮している。そして、
「真偽はどうであれ、俺はこんなことをする奴が許せない」
濁すような発言をすると、続いて蒲須坂との個人LINEを晒した。そこには既読の付いていないメッセージが書き込まれていた。
「俺だけに返信が来ていないならまあ良いが、周囲の誰とも連絡すらしていないらしい」
確認して回ったんだが。とかボソボソ言ってる国定には申し訳ないが、俺はたった一日で大げさすぎると思った。お前は何か知っているかと聞かれたけれど、残念ながら携帯電話の通知は公式アカウントと両親からしかやってこないと返答する。
「それで、どうすればいいんだ?」
渾身の自虐ネタさえ、表情ひとつ変えずに聞いていた国定の顔がここではっきりと歪んだ。それは全ての元凶となった放課後、蒲須坂を呼び出した瞬間のような一刹那の変化。
――しかしあの時とは異なり今回はそれが元に戻ることはなかった。
先程までのやり取りを経たことで、俺の中にはひとつの仮説が浮かんでいた。それは国定が周囲に気を遣いすぎて、結論を後回しにしているというものだ。実に日本的で民主主義の鏡である。世界中の人間が彼のような性格をしていたら戦争は起こらないだろう。
しかし、こういう性格の持ち主は往々にしてある傾向を持っていることがある。
それは直接的に結論を求める言葉があまり好きではないということだ。そして、多くの場合はとんでもなく肥大なエゴもセットで抱え込んでいる。
「……」
言葉に詰まっていた国定は一度呼吸を整えて前を向く。人殺しでもしそうなくらい真剣な瞳は、この先冗談の一つも許さない雰囲気を醸し出していた。彼とて例外ではなかったようだ。
「余計なことだけはするな」
いつもより一オクターブ近く低いくぐもった声から、こちらへの呆れを感じ取る。予想が正しければ、おそらくこいつは今ここで俺を敵認定したはずだ。そして、それは次の行動で確証に変わる。
案の定、国定は急に立ち上がり図書準備室の扉を開けて立ち去っていった。
「残念だよ」
という捨て台詞を残す辺り本物だろう。
「残念なのはお前だ」
俺は誰もいない図書準備室でそっと呟いた。
前にも触れたが、彼の信念は「誰に対しても平等に優しいこと」である。しかしそれだけではエゴにならない。これを変換すると次のようになる。
――例え相手が何をやってきたとしても寛大な心で許してあげよう。
閲覧ブクマありがとうございます。説明が難しくなってしまう部分なのでどうしても分かりにくくなっていると思います。最悪流れさえ分かればOKです。要するに国定と大平下は対立しました(笑)
この辺は特に適宜修正を加えるかもしれませんがご了承下さい。
ちなみに2章はここまでです。




