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仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
2章:人付き合いの代償
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12話:「侵入者」

その後は何事もなく一日が進んでいった。国定の激高を見て尚且つその琴線を刺激するような愚か者はさすがにいなかったようだ。


 現在山前高校は昼休みを迎えている。俺は母親お手製の残り物詰め合わせ弁当を早々平らげて図書準備室にいた。春らしい心地の良い気候が昼下がりプライベートスペースでくつろぐ男に睡魔を引き寄せる。


「いい天気だな」


 欠伸をしながらパイプ椅子を斜めにして手を頭の後ろにやる。崩れそうな急角度だが窓のサッシに背が引っかかることで転ぶことはおそらくない。


 そもそも、ここに来た理由は今朝からの件をどうするべきか、その方向性を定めておこうとしたためであったが、うららかな陽気は余計な考えごとをする意欲なんてことごとく割いていく。とりあえずは当分このままで良い気さえしている。


 最もどの様な形でもいいから蒲須坂と接触しない限りは話が進みようないから現状維持以外やりようないのだが……


 ドンッドンッドンッ


 ぼんやりとしていた俺は、ポスターなどでカモフラージュを凝らした扉の奥からノックが聞こえてきたことに驚いてパイプ椅子から崩れ落ちた。尻を床に強打し、大げさな衝撃音が響き渡る。


「痛っ」


 まだこのプライベートスペースを占領して一ヶ月も経っていないのに気づかれるとは、何ということであろう。――我一生の不覚なり。


 誰かが心の壁くらい重厚な扉を開こうとガチャガチャドアノブを動かしている。俺はこれ以上多くの人にバレないようにするため慌てて施錠を解いた。そこで目立たれては迷惑極まりない。


「ここにいたか」


 目の前にいたのは、先程普段とは違った一面を見せた国定だった。珍しく単独で登場した彼はズケズケと図書準備室へ踏み込むと、適当に置かれていたパイプ椅子に腰掛ける。


 俺はさっさと鍵を閉めて、侵入者の様子を観察する。彼は周囲をキョロキョロと見回すだけでやけに平然としていた。


「どうしてここが分かった」


「先代の図書委員長に聞いた」


「……」


 咄嗟に眼鏡を掛けた真面目そうな前職の顔が思い浮かんだ。今年の春に一子相伝だからこの話は次の委員長が決まるまでするなと言っていた彼は、自分が責任から解き放たれた途端に口が軽くなったらしい。伝統とは一体何なのか。


 少しの沈黙があって話は再び展開する。俺もいつしか長机を挟んで国定の正面に位置するパイプ椅子に座りなおしていた。思えばこいつの溢れる良い奴感が気に食わなくて、あの日タイマンで話したくないから回りくどいことをしたのに、それが原因でこう一対一になるとはなんという皮肉。


「時間がないから用件を話していいか」


 国定はダメと言ってもどうせ話すのに一々断りを入れてくる。それに頷くだけで対応すると、彼はひとり語り出した。


ご視聴ありがとうございます。 空白開けるだけで閲覧数が少し増えましたので今後とも継続していこうと思います。また、そろそろ3章に入るのですが、1章ごとに要約文を設けてみようかなと思っております。効果あるかな? 分からないが試してみます……

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