11話:「理科室の攻防-延長戦-」
学級委員も兼任する国定の号令でいつもの挨拶が行われて休み時間に切り替わると、クラスメイトの大半は我先にこちらへ向かってきた。そしてなぜか一斉に話し出す。
聖徳太子でも一〇人が限界だというのに一般人がこんなの聞き分けられる訳ない。雑音を耳から耳へと流してやり過ごす。
「いい加減にしろ」
そろそろ何か言い返そうかなと思った時に人の輪から周囲を咎める声がした。その方向に視線を移動するとそこには呆れたような顔をした国定がいた。
「お前らくだらないことをしているという自覚はないのか」
俺自身一年以上も観察を続けているこのイケメンは、誰に対しても平等に優しいことが最大の特徴だった。あくまで噂に過ぎないが、この男は圧倒的な容姿と性格に成績優秀な面まで兼ね備えているにも関わらず、彼女の一人もいないらしい。
「そうは言っても国定さぁ」
野次馬がさっさとその場を離れる一方、食い下がる人物もちらほら。その中には先程までしつこく絡んできた姦し組や猿もいた。
そんな態度に対して珍しく温厚な国定が嫌悪感を露わにしている。しかし、引き際の理解できない連中にはなぜ彼が怒っているのかさえ理解できていないだろう。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん、なっ」
火に油を注ぐようなやり取りは、すっかりと蚊帳の外へ追いやられた俺でも頭が痛くなるくらい低レベルなものだった。こいつらはどのようにして一般入試を潜り抜けてきたのだろうか。いや、倍率が低かったから切り捨てられなかっただけなのかもしれない。
「無視すんな、大平下」
さりげなく理科室から去ろうとしたところを猿に呼び止められる。日陰者特有のステルスは相手の意識がこちらに向いていない時しか発動できないようだ。
「知るか」
声に出さないと伝わらないみたいなのではっきりと意思表示をする。それも相手の国語力に合わせた分かりやすい言葉で。
「大平下!」
着火剤で激高したのはなぜか国定だった。俺はこの時知らなかったのだ。彼が誰にでも優しいだけでなく、輪を乱す人間も嫌っているということを。
中々見ることのできない国定の一面に、周囲が釘付けになる。特別教室棟でなければ、他クラスの野次馬も集まっていただろう。
「言い過ぎた、すまん」
「いいって別に」
しかし、国定は怒りの灯が消えるのも非常に早いみたいだ。こちらが軽い謝罪を呟いただけで燃え上がった炎は急速冷凍した。
そんなこんなで休み時間は終わりに近づいていく。俺に詰め寄ろうとしていた奴らも、次の授業に遅れる訳にはいかないので早々に手を引いてくれた。
毎度閲覧ありがとうございます。弄る気がしなかった章立てのやり方を理解したので編集しました。
ちなみに、空白の取り方を変えてみましたが如何でしょうか。
好評なら今後も統一しつつ、何とか前回までも修正をかけます……




