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仮題『かさぶたは次なる怪我の下準備』  作者: 中之島 零築
2章:人付き合いの代償
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9話:「悪い予感は何故かよく当たる」

結局一時間目が終わるまで俺は図書準備室に入り浸っていた。読書をする心の余裕など全くなかったが、それでも授業としては得意分野の古典であるためこの無断欠席も何とかテストで取り返しがつきそうだった。その点はこちらに運が向いていた。


「さてと」


 俺は覚悟を決めて勝手に割り振られた自分の所属する教室へと向かう。嫌がらせに備えて荷物は一部施錠した図書準備室に置いてきた。だが足取りは重い。まるで鉛のようだ。そして絶対輩に絡まれる。それが何よりも憂鬱だった。


 中途半端に逃亡した自分を恨みたくなるが、あの時は一度整理する時間が欲しかったのだと割り切って黙々と歩みを進める。幸いこの状況にも関わらずまだ確証を得ていないことが一つだけあった。


 それは写真に写る蒲須坂の姿が彼女であることがバレているか否かである。あの日駅で彼女に会った時のようにクラスメイトもイメチェンした姿には気づいていないのかもしれない。それならば、ただ俺が女とカラオケに行っていたという事実だけで済むのだ。


――致命傷には変わりないが。


 大体誰が盗撮なんかしたのだろうか。それだけがどうしても気がかりで俺は考察しながら一歩また一歩と目的地へ進んでいく。答えなど出ることなく早々二年のフロアへと辿り着いてしまった。


 ここからは一瞬だ。俺の所属する二組へと向かうため、まずは一組の前を素通りする。休み時間なので廊下にも大勢の同級生がいた。彼らは一限後に現れた重役出勤者に一瞬怪訝な反応を見せるものの、友人とのおしゃべりの時間を犠牲にするほどそれを重要視していないためすぐにこちらから視線を逸らす。二組の生徒は誰一人としていなかった。


「良かったぁ」


 内心胸をなで下ろし、俺はゆっくりと自分の教室の扉を開こうとする。


「あれ?」


 二組の教室には鍵が掛かっていた。そういえばいくらボロい県立高校と雖も移動授業時には盗難防止でこのようなことを行うのだということを俺は今思い出した。


「どうするか……」


 どうしようもない。ただもしかしたら、ここからでも分かることがあるかもしれないと思って俺は窓から教室を覗いた。これでは完全な不審者だ。


 等間隔に並ぶ木製の机と椅子。判を押したように同一なそれにも借主の個性が宿る。ある人はクッションや膝掛を、単純にプリントや教科書で溢れかえっている場合もあった。そんな中、ふと自分の机に目をやると見慣れない冊子が置かれていることに気が付く。そして当たり前だがそんなものの記憶などない。


 最悪の事態を想定し、俺は慌ててある机を探し出した。それは窓際の奥だったような。


 ――嫌な予感というものはどうしてか的中するものだ。見慣れない冊子は蒲須坂の席にも置かれていた。つまり彼女は今日現時点においては欠席確定である。


 まだ風邪の可能性も…… なんて希望的観測をする気にはなれなかった。寝坊して移動教室に直行しているなんて尚更考えなかった。


 覚悟を決めるしかないようだ。俺は写真の詳細がクラスメイトに正確に伝わっているものだとここで確信した。



短いことには変わり有りませんが、8話の加筆修正を行いました。どうしても前の展開からだと繋ぎが思いつかなかったので申し訳ございません。

※追記(2023.1.12)9話も同様に加筆しました。度々申し訳ございません。

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