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不思議な生産職の生存戦略  作者: 形成層
シロクマさんと森の賢者
1/7

付き人付きの薬師さん

「道具に頼ってばかりの役立たずはもうクビだ。」


 そんなお決まり文句を放ったのはとある冒険団のリーダー格、その傍らには強者然とした仲間たちを侍らしている。

 そのリーダー格である青年も、侍らしている冒険者たちに負けず劣らずの実力者だ。


 対して、言い渡されたのは冒険者というには小柄なしょ…青年だ。

 一応、冒険団のリーダーとほぼ同い年である。

 そんな彼は唐突に言い渡された戦力外通知に、呆然と


「―了解、世話になったなみんな。月並みだけどこれからも頑張ってくれ」


 ―するでもなくあっけらかんとその事実を受け入れた。

 その目はどことなく空虚ではあったが。


「ちょっとまって、このパーティから離れるのは惜しくないの?」

「まぁ、惜しい気持ちはあるが、命は惜しいからなぁ…」


 そういいながら、彼はリーダー格の横で待機している元仲間たちと自らの補充要員を見渡す。

 するとあることに気づいた。


「あれ、人数足りなくない?」


 彼が所属していたころは4人で探索に挑んていたものだが集まっている人員は3人、最低でもあと一人はいないと大口の依頼を受けることができないのだ。


 そこでようやく合点がいったようにリーダー格の男が口を開いた。


「今回除名するのは、リベローお前ひとりだ。お前の幼馴染―リリアは俺たちにも欠かせない存在だからな。このことはすでに彼女にも伝えてある」

「なん…だと…!?」


 ここでようやく追放される男―リベロが動揺を見せ始めた。

 リーダーは新鮮な反応に気をよくしたのか矢継ぎ早に話をつづける。


「当たり前だろう?お前は器用さだけが取り柄の魔法も目立ったスキルもないしがない猟師。だがリリアは手先の器用さ以外に魔法も使えるしまだまだ伸びしろが多い。実力も住んでいける世界も全然違うんだよ」


 かなりとげのある言い方に言い返したくなるリベロ。

 しかし悲しいことにぐうの音も出ないほどの事実だったのである。

 ただ、リベロにとってはある意味好機ともいえた。


「―なら、リリアの夢に協力するということでいいんだな?」

「彼女の夢…聞いたことはないが当たり前だろう。彼女は俺たちの仲間だからな!」

「は?聞いたことない…?」


 話が食い違い互いに頭に疑問符を浮かべているとそこに救いの手が差し伸べられた。

 いや、もしかしたら破壊神の手かもしれない。


「リベロ―!まだ話し終わってないの!早くしないとおいてくよー!!」

「「「「は?」」」」


 件の人物、幼馴染リリアの登場である。

 なぜか自分の荷物とリベロの荷物をひっさげやってきたのだ。

 混乱のただなかをまっすぐに突き進み、リベロの手をつかんだ。


「それじゃぁリーダーさん。いままでお世話になりました!縁があればどこかで会おうね」


 状況に追いついてないリベロを手を引いて立たせて、リリアは軽快な足取りで新たな生活への一歩を踏み出そうとしている。

 そこに待ったをかけたのは、当たり前の話だがリーダーだ。

 


「ま、待ってくれ!君には残ってもらえないと困るんだが!?」

「え、やだなぁリーダーさん。さっき使えないからクビにするって言ったじゃない」

「それは君の幼馴染の話で、君自身にはそのまま仲間にいてほしいんだ!」

「あ、そういうことなの?…でも困ったな。まだリベロには頼みたいことがあるし…」


 そういってしばし考える仕草をしたリリアは悩みを振り切るような所作で勢いをつけて宣言した。


「ごめんねリーダー!また私にはリベロが必要だし、こいつが出ていくっていうなら一緒についていくよ」


 相手に反論どころか口を挟む隙すら与えず幼馴染である青年を引っ張て行く。さながらその様は暴走特急のようだ。


 そして場にはぽつねんと二人の仲間からおいてかれた元有望冒険者一行だけが残された。


「おい、本当に良かったのか?少なくともあそこについていけば早いうちにいろんなところに行けるだろうし…」


 冒険者たちが集う集会所から程よく離れたところで、リベロはようやく口を開く。

 リリアは大して葛藤をしてる様子もない。


「いいのいいの。ちょっとイラっと来たのは事実だし、私もあのペースはきつかったし」


 ようやく一休みできるとでも言いたげに伸びをして答えた。

 それに、とつけくわえて語る。


「あまり他人に私たちの目的を言いふらすのはダメでしょ。わざわざ職業まで偽装してるんだし」


 今リリアは薬師を、リベロは猟師を名乗っている。

 それはあくまで、冒険者がそれぞれの目的に合致した人員を確保するための指標の様なものであり、往来でも使える身分証明にもなるものだった。

 この職業に関しては冒険者登録をした上でギルドに一定以上の技術を示すことができれば、誰であっても名乗ることが許される。

 多少経歴に傷や不備があっても、実力と技術があれば公共からのお墨付きがもらえるシステムだ。

 もちろん少しでも不審だと思われれば技術査定も厳しいものとなるが。


 −つまり身分を隠したい輩には有り難い抜け穴だった。


 この二人、ー特にリリアは特殊な出自により他者よりも秀でた成績を納め、冒険者入りを果たしていた。

 とある目的のため、各地を旅する必要があったためだ。

 それも、行動を開始して一年という節目で方針の転換を余儀なくされそうである。


「それで、これから暫くはどうするつもりだ?」


 これからというときに立ち込めた暗雲にリベロは頭を悩ませる。


「うーん、後半ずっと探索してたお陰でアイディアたまってるんだよね。…明日1日は自由行動でいいんじゃないかな?」


 リリアはあまり気にした様子はない。

 そんな彼女に感化されたのか気が抜けたようにため息をついた。


「わかった。じゃあ明後日にこれからのことを考えよう。…一応聞くがわざわざ故郷を出た目的は…覚えてるよな?」

「あったりまえじゃない!」


 一拍息を吸い込み、高らかに宣言する。


「目指せ!億万長者!!」

「ちがうからな?」



 ―これはとあるギルドで見つかった、古書に記されていたギルド創立にかかわるお話


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