表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/116

友の子孫と子孫の事情――4

 翌朝。パンデムの(はず)れにある草原に、俺とセシリアは来ていた。


 もちろん、鍛錬(たんれん)のためだ。


「セイバー・レイの切れ味は素晴らしい。が、限界がある」

「オアー・ドラゴンの(うろこ)には歯が立ちませんでしたしね」


 パンデムへ向かう途中で、俺たちはオアー・ドラゴンに遭遇(そうぐう)した。セシリアはオアー・ドラゴンの脚を切断しようとしたが、最硬(さいこう)と称される鱗に(はば)まれてしまった。


 あのときのことを思い出したのか、セシリアがシュンとする。


「ならばこそ、さらなる切れ味を求めるべきだろう」


 セシリアを励ますために頭をポンポンと撫でながら、俺は鍛錬の内容を告げた。


「今日から『(れん)』の修得に入る」


 魂力を武具にまとわせ、威力・耐久力を上げる武技『錬』。錬を修得すれば、オアー・ドラゴンの鱗さえ軽々(かるがる)と断てるようになるだろう。


「セシリアはすでに四つの武技を修めている。魂力の扱いには慣れているだろう。武技にまとわせることもできるはずだ」

「はい! やってみます!」


 元気を取り戻したセシリアがギュッと拳を握り、木剣を構えた。


 セシリアがまぶたを閉じ、ゆっくりと呼吸する。セシリアの体から魂力が溢れ出し、木剣へ移動していった。


 やはりセシリアのセンスは驚異的だ。魂力を手足のように扱っている。まったくもって末恐(すえおそ)ろしい。


 俺が感心するなか、セシリアの構える木剣が魂力をまとった。


「できました!」

「うむ。では、俺の木刀を()ってみよ」


 俺は木刀を中段に構える。


「この木刀には俺の魂力が流し込まれ、鉄と同等の強度になっている。セシリアの錬が成功していれば、その木剣でも断てるはずだ」

「はい!」


 セシリアがキリリと眉を上げ、木刀を見据(みす)えた。


 ふっ、と鋭く息を吐くとともに、セシリアが木剣を振り上げる。


「はぁああああああっ!!」


 力強い踏み込み。


 裂帛(れっぱく)気合(きあい)


 セシリアが袈裟斬(けさぎ)りを放った。


 木剣が木刀を打ち据える。


 草原に炸裂音が響いた。


 剣戟(けんげき)木霊(こだま)が収まる。


 木刀には傷ひとつついてなかった。


 セシリアが肩を落とす。


「失敗ですか……」

「失敗ではあるが、魂力は充分にまとわせられている。足りないのはイメージだな」

「イメージ?」


 首を傾げるセシリアに、俺は問題を出すように指を立てる。


「錬は武具を強化する武技。剣を強化するとなると、なにが求められる?」


 セシリアが黙考(もっこう)し、答えた。


「切断力です」

「正解だ。となれば、切断力が上がるようなイメージをすればいい。具体的には、魂力によって刃が()()まされる(さま)を思い浮かべるのだ」

「やってみます!」


 俺のアドバイスを受け、セシリアが再びまぶたを閉じる。


 そんな俺たちの様子を眺める者が、ひとりいた。


 エミィだ。


「イサムさん、本当に過去から来たんだ」


 エミィが目を丸くする。


 エミィには、俺が過去から飛ばされてきたこと、俺が勇者パーティーの一員であったことを知らせてある。


 半信半疑だったようだが、失われた戦闘術である武技を用いたこと、武技をセシリアに教授していることで、俺の話が真実だと悟ったようだ。


「えっと……イサム様って呼んだほうが……あ、お呼びしたほうが、いい? ……ですか?」


 慌てて敬語を使おうとするエミィに、俺は思わず吹き出す。


「かしこまらずともいい。無理をさせるのは心苦しいのでな」


 敬語が苦手らしいエミィはパチクリと(まばた)きをして――


「ありがとう」


 安堵(あんど)の息をつき、頬を緩めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ