表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/116

デートと討伐と邂逅――11

 ピースメーカーの本部は、パンデムの北部にある四階建てのビルだった。


 ウォルスの案内で、俺たちは二階にある会議室に通された。


 出されたお茶で一服(いっぷく)したのち、俺は事情説明をはじめる。


「俺たちの目的は、顕魔兵装という兵器の破壊だ。ティファニーから聞いたが、お前たちは『ある犯罪組織が謎の兵器を入手した』との情報を持っているそうだな」

「『謎の兵器』が顕魔兵装かもしれないってわけッスネ? ところで、その顕魔兵装ってなんスカ?」

「魔族核を用いた兵器だ」

「ハァ!?」


 ウォルスが愕然(がくぜん)とする。


「なんでまた、そんな物騒(ぶっそう)な代物ガ……」

「魔族の血を継ぐ者たち――『魔の血統』の(たくら)みで製造されたのだ。大方(おおかた)、人間に復讐するための手段なのだろう」


 ウォルスは言葉を失い、あんぐりと大口を開けた。


 仕方ないだろう。魔王の討伐により、魔族は姿を消したと考えられていたのだ。まさか、人間と交わり子孫を残していたなど、思いも寄らなかったのだろうからな。


 ウォルスが目元を覆い、深く深く溜息をつく。


「想像以上に大事(おおごと)ッスネ」

「ああ。『魔の血統』の暴挙(ぼうきょ)はなんとしても阻止(そし)せねばならない。協力してくれるか?」

「もちろんッス」


 ウォルスが神妙(しんみょう)な顔つきで頷いた。


「助かる」と礼を告げ、俺はウォルスと握手する。


 協力を約束し合ってから、ウォルスが情報を提供しはじめた。


「顕魔兵装と思われる兵器を入手したのは『ヘルブレア』。長年パンデムに巣くっている犯罪組織ッス」


 ヘルブレアとは、


「『高貴なる者の務めノブレス・オブリージュ』によって地位を奪われた、貴族が結成したものらしいッス。当然、構成員には元貴族が多いので、メンバーの力量はかなりのものッス」

「魔法の才は遺伝によるものが大きい。才ある者を配偶者(はいぐうしゃ)に選んできた貴族には、実力者が多いからな」


 言いながら、俺は複雑な気分になっていた。


『高貴なる者の務め』は、『賢者』フィーアが貴族の腐敗を打破(だは)すべく設けた、『社会に貢献した者・家系に、貴族位の授与・地位の昇格を行い、長く貢献していない貴族に、族位の剥奪・地位の降格を行う』制度だ。


 実際、この制度は効果的で、現代社会は二〇〇年前とは比べものにならないほど発展した。


 だが、完璧な制度など、この世にはない。どんなに素晴らしく見えようと、必ず穴があるものだ。


 フィーアが設けた制度も例外ではない。元貴族がヘルブレアを結成したのは、地位を剥奪されたことに対する反発だろう。なんともやるせないものだ。


 だが、感傷(かんしょう)に浸っている(ひま)はない。いますべきことは、顕魔兵装の速やかな破壊だ。


 気持ちを切り替え、俺は話を続けた。


「骨が折れそうな相手だな」

「ええ。しかも、ヘルブレアの本拠地は見つかってないんス。パンデムの権力者のなかに、ヘルブレアと密通している者たちがいるみたいッスから、そのためでしょうネ」

「権力者が後ろ盾になっているわけか」


 ウォルスが渋い顔で首肯する。


 厄介な組織に顕魔兵装が渡ってしまったな。まったくもって面倒なことだ。


 俺は嘆息した。


「なにはともあれ、ヘルブレアの本拠地を見つけねば話にならん。まずはそこからだ」

「ええ。いい加減、自分たちもヘルブレアの横暴(おうぼう)は見過ごせませんかラ」


 方針は決まった。とはいえ、夜がすぐそこまで来ている。


 明日、ヘルブレアの本拠地を突き止めるための作戦を練ることにして、俺たちはピースメーカーをあとにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ