デートと討伐と邂逅――5
日が傾きはじめた。
ひととおりジェインの街を巡り、どこにどのようなものがあるか調べ終えた俺とセシリアは、ティファニーと合流するため駅前の時計台に向かっていた。
その途中、中央通りにて、セシリアが一軒の露店に目を留める。
「アクセサリーを売ってるみたいですね」
露店のカウンターには数々のアクセサリーが並んでいる。セシリアはそれらのアクセサリーを興味深げに眺めていた。
「寄っていくか?」
「けど、ティファニーさんと待ち合わせしていますし……」
「約束の時間までまだある。少しなら寄り道しても構わないだろう」
「……では、少しだけ」
セシリアが微笑み、俺たちは露店に向かう。
「……なんだか、本当にデー……みたいですね」
セシリアがなにやら囁いた気がした。
「なにか言ったか?」
「い、いえ、なんでもありません!」
俺が尋ねるも、セシリアはパタパタと両手を振って否定する。その頬はほんのりと朱が差していた。
「いらっしゃい、お兄さん、お嬢さん。よかったら好きなだけ見てってよ」
歩いてくる俺たちを、露店の男性店員が和やかな顔で迎える。
遠慮なく、俺とセシリアはアクセサリーを眺めることにした。
並んでいるアクセサリーには宝石や天然石があしらわれていた。細工も丁寧で、素人の俺でもいい出来だとわかる。
そのなかのひとつに俺は目を引かれた。花を模した金属細工。その中央にグリーンメノウを埋め込んだ、髪留めだ。
俺は髪留めを手にとり、セシリアに見せた。
「セシリアの瞳と同じ色だな」
「本当ですね。とってもステキです」
セシリアが華やいだ笑みを浮かべる。どうやら気に入ったらしい。
セシリアの笑顔に満足して、俺は店員に声をかける。
「この髪留めを買いたい」
「えっ?」
セシリアが目を丸くした。
「いいんですか?」
「ああ。気に入ったのだろう? 講師業の対価としてスキールから給金をもらっている。遠慮することはない」
「けど……」
セシリアが申し訳なさそうに眉を下げる。
俺はカラリと笑った。
「俺がセシリアにプレゼントしたいのだ。受け取ってもらえたら嬉しい」
「ふゃっ!?」
セシリアが謎の鳴き声を上げて、視線を泳がせる。
指と指をモジモジさせたセシリアは、恥ずかしがるようにうつむいた。
「……やっぱり、イサム様はズルいです」
ポツリと呟いたセシリアは顔を上げ、ふにゃりと頬を緩める。
「喜んで受け取らせていただきます」
思わず見とれてしまいそうなほど可憐な笑顔だった。
「いいねー、初々しいねー、甘すぎてブラックコーヒーがほしくなっちゃうよ」
俺とセシリアのやり取りを眺めていた店員が、クツクツと喉を鳴らす。
「お兄さんとお嬢さんはお似合いのカップルだね」
「カカカカップル!?」
からかうような店員の言葉に、驚いて毛を逆立てる猫の如く、セシリアが肩を跳ねさせる。その顔は夕日ほど赤く染まっていた。
「いいもの見せてもらったから、お代は八割でいいよ。カップルさんへの特別サービス」
店員がウインクする。
セシリアはなおも顔を赤らめて、「あぅあぅ」とアタフタしていた。
「それは悪い。俺とセシリアはカップルではないからな」
「え? あ……そ、そう」
だが、騙すわけにはいかない。俺は正直に告白して、店員に正規の代金を払う。
なぜか気まずそうに頬を引きつらせて、店員は代金を受け取った。
店員から髪留めを受け取り、セシリアに手渡す。
「ほら、セシリア」
「……ありがとうございます」
「む? なにやら沈んだ顔をしているが、どうした?」
「……なんでもありません」
先ほどまで赤面しながらアタフタしていたセシリアは、どういうわけか無表情で肩を落としていた。
店員が乾いた笑いを漏らす。
「えっと……めげずに頑張りなよ、お嬢さん」
「……はい」
セシリアが深く深く溜息をついた。




