デートと討伐と邂逅――3
「ここは市場か」
「お肉もお魚もお野菜も、いっぱい揃ってますね」
「飲食店も見受けられるな」
街を巡る俺たちは、ジェインの西部に来ていた。西部の大通りには市場や飲食店が建ち並び、活気に満ちている。
「あっ!」
そんななか、セシリアがはしゃいだ声を上げた。セシリアの瞳は宝石のように輝き、一点を見つめている。
セシリアの視線を追うと、一件のパン屋があった。パン屋は店頭販売を行っており、テーブルの上には拳サイズのパンが並んでいる。パンには切れ込みが入れられ、みっしりとクリームが詰められていた。
セシリアが声を弾ませる。
「マリトッツォです!」
「マリトッツォ?」
「はい! ジェインの名物で、パンにクリームを挟んだお菓子です!」
一目で興味津々とわかる様子だった。
思えば、マリーも、リトも、普段はクールなフィーアでさえも――勇者パーティーの女性陣は、皆、甘いものを前にすると目の色を変えていた。
どうやらセシリアも、甘いものに目がないらしい。
頬を緩め、俺は提案する。
「食べていくか?」
「はい!」
満面の笑みでセシリアが振り返り、「あ」となにかに気づいたように声を漏らした。
セシリアの笑顔が曇る。
「けど、わたしたちはジェインの街を探索している最中ですし……サボるのはティファニーさんに申し訳ないです……」
セシリアが肩を落とした。頭の上に雨雲が漂っているかのようだ。
真面目な子だな。買い食いをしたくらいでは罰は当たらんというのに。
苦笑しつつ、俺は述べる。
「食べたければ食べても構わないと思うぞ?」
「で、ですけど……」
「我慢は体によくない。それに、ここ一時間ほど歩き通しだったからな。休憩をとれば効率も上がるのではないか?」
俺の意見に、セシリアがピクッと反応した。
セシリアの視線が再びマリトッツォに向けられる。
「そ、そうですね。休憩は必要ですよね。効率が上がれば、よりよい成果も得られますしね」
釈明しながらも、セシリアの目はマリトッツォに釘付けになっていた。『休憩をとれば効率も上がる』との免罪符は、効果てきめんだったらしい。
正直なセシリアが微笑ましくて、俺は笑みを堪えられなかった。




