デートと討伐と邂逅――1
「到着しました。ここがジェインでございます」
ラミアを出発してからおよそ五時間後。グレアムが魔導車を路肩に停めた。
ミロス王国北部の街『ジェイン』に着いたのだ。
ジェインには、周りの街と繋がる交通機関が多数あり、ミロス王国北部の交通の中核になっているらしい。
辺りの建物はレンガ造りのものが多く、味のある街並みをしていた。
「長時間の運転、ご苦労だった」
「とんでもございません」
俺が労うと、グレアムは皺だらけの顔に柔和な笑みを浮かべて謙遜する。まことに礼儀正しい男だ。
俺は魔導車を降りてぐるりと反対側に回り、シートベルトというらしい器具を取り外したセシリアに、手を差し伸べた。
「セシリア、手を」
「あ、ありがとうございます」
セシリアは赤面しながらも俺の手を取り、魔導車を降りる。口角がわずかに上がっており、どことなく嬉しそうに見えた。
そんな俺たちの様子を眺め、ティファニーがニマーっと、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「へぇー、ふぅーん、ほぉー。セシリアちゃんってそうだったんだー」
「ふゃっ!?」
ティファニーがからかうような口調で意味深なことを言って、セシリアが奇妙な声とともに肩を跳ねさせた。
ちなみに、ティファニーがセシリアを呼ぶ際、『さん』付けから『ちゃん』付けになっているのは、移動中に打ち解けたからだ。
セシリアとティファニーのいまのやり取りはなんだろうか?
首を傾げつつ、俺はティファニーの降車を手伝おうと助手席へ向かう。
が、俺が手を差し伸べるより先にティファニーは車を降りていた。
「む?」と目を瞬かせる俺に、ティファニーが「ちっちっちっ」と人差し指を振りながら、ニヒルな笑みで忠告してくる。
「ダメですよ、イサムさん。そういうのはセシリアちゃんだけにやってあげてください」
「ティティティティファニーさん!?」
なぜかセシリアが慌てた。
赤い顔で両手を忙しなく動かすセシリアに、ティファニーがからからと笑っている。どういうわけか、シャイな仔犬とイタズラ好きな猫を連想させた。
そういえば、五日前に稽古をした際、ティファニーと似たことをセシリアから言われたな。
顎に指を当てながら、俺は思い出す。
――イサム様? そういうこと、ほかの女性の方に言ってはダメですからね?
ようするに、ティファニーとセシリアは、『セシリアを特別扱いしろ』と言いたいのだろう。俺にとってセシリアはすでに特別な存在なのだが、今後は一層気をつけるとしよう。
「うむうむ」と頷いていると、グレアムが魔導車から降り、慇懃に腰を折った。
「私がお供できるのはここまでです。皆さま、どうかお気をつけて」
「ああ。助かった」
「「ありがとうございます」」
俺たちは礼を口にして、グレアムに背を向ける。少し先にある道を曲がるまで、グレアムは頭を下げ続けていた。
「じゃあ、次は駅に向かいましょう」
俺とセシリアの先を歩きながら、ティファニーが和やかに言う。
「パンデムへの旅は折り返し地点ですよ」




