プロローグ
わたし――セシリア=デュラムには好きなひとがいる。
ご先祖様である『勇者』ロランと『聖女』マリーの友人にして、勇者パーティーの一員にして、わたしの師匠でもある、『剣聖』イサム様だ。
ベルモット准教授に捕らえられたあの日、イサム様に助けていただいたあの日、わたしは自分の恋心に気づいた。
仕方ないと思う。
イサム様は、わたしを『「勇者」と「聖女」の子孫』ではなく、『セシリア=デュラム』として見てくれた。
イサム様は、わたしの努力を認め、わたしを見下していたホークヴァン先輩を咎めてくれた。
イサム様は、誘拐犯にさらわれそうになったときと、ベルモット准教授に捕まったときの、二度もわたしを救ってくれた。
イサム様は、一生わたしの側にいて、守り続けると誓ってくれた。
仕方ないと思う。
好きになっても仕方ないと思う。
こんなの、どうしたって好きになってしまうに決まってる。
むしろ、いままで自分の恋心に気づかなかったことが不思議なくらいだ。
正直、戸惑いはある。なにしろ、わたしにとってこれは初恋なのだから。
けれど、同時に幸せでもある。誰かを好きになることが、こんなにもステキなことだなんて知らなかったから。
だからこそ、わたしはこの初恋を絶対に成就させたい。イサム様と両思いになりたい。伴侶として一生をともにしたい。
ただ、ひとつ問題がある。
毎日ベッドで一緒に眠るときも、わたしがぴったりくっついたときも、イサム様はドキドキした素振りを一切見せない。
そう。イサム様は、わたしを異性として意識していないようなのだ。
イサム様は二十一歳で、わたしは一七歳。年齢は決して離れていない。
けれど、どうにもイサム様は、わたしを娘のように思っている節がある。イサム様の言動から、わたしを見守るような気持ち――父性を感じるから。
おそらく、イサム様がわたしのご先祖様の仲間だったからだろう。仲間の子孫だからこそ、わたしを娘のように捉えてしまうのだ。
これではいけない。
初恋を成就させるには、イサム様と結ばれるには、まずはわたしを異性として意識してもらわなくてはならない。
だから、わたしはイサム様にアプローチすると決めた。わたしは異性だとアピールすることにした。
はじめてのことで緊張するけれど、躊躇ってはいられない。
この恋を叶えたいから。
こんなにも誰かを好きになることは、多分、もうないと思うから。
ただ――
アプローチって、どんなことをすればいいんでしょうか?




