真相と大悪と修羅――7
「私の狙いに気づきましたか」
エリュの片眼鏡に繋がっていた魔力線。それをたどって研究室まで来た俺に、「ほう」とヴァリスが感心した。
「もう少しエリュ教授で時間稼ぎできると思いましたが……あなたを過小評価していたようですね」
ヴァリスが肩をすくめる。追い詰められたわりに、余裕があるようだった。
「ここまで来たということは、私の部下たちやバアル・アームズも倒したのでしょう。いやはや驚きました」
芝居がかった様子で、ヴァリスが溜息をつく。
「流石は『剣聖』です。褒めてあげましょう。ですが――」
「囀るな」
俺は冷たく言い放つ。
饒舌だったヴァリスの口が止まった。
「その汚い手をセシリアから放せ」
思わずといった風に、ヴァリスがセシリアの首から手を放した。
セシリアが咳き込む。
ヴァリスはハッとして、歯ぎしりした。俺の圧に屈し、手を放してしまったことが悔しいらしい。
「お前と無駄話をするつもりはない。お前は俺の大切なひとに手を出したのだ」
俺は刀の切っ先をヴァリスに向ける。
「許さん」
青い炎の如き怒気。
ヴァリスが顔を強張らせ、強がるように口端を上げた。
「言ってくれるではないですか」
ヴァリスの手が、壁に立てかけてあった魔銃に伸びる。長く太い銃口を持つ、魔銃に。
魔銃の取っ手を握り――ヴァリスが銃口を俺に向けた。
「やれるものならやってみなさい!」
ヴァリスが引き金を絞る。
発砲。
石弾が射出された。一発ではなく、無数の。
無数の石弾は弾幕となり、点ではなく面として俺を襲う。
審眼ですべての石弾の軌道を見切り、俺は刀を閃かせた。命中するであろう石弾だけを叩き斬る。
石弾が研究室の壁に穴を開けた。
俺は無傷だ。
「驚きましたか? この魔銃は、エリュ教授の最新作『ロック・バースト』。一度に複数の土魔法を――」
「無駄話をするつもりはないと言っただろう」
ヴァリスの話を無視して、俺は体を前傾させる。疾走の体勢だ。
一気に終わらせる!
両脚に魂力を集め、疾風を発動。
ヴァリスに肉迫するべく床を蹴る――寸前。
「まったく。せっかちなひとだ」
ヴァリスが手のひらを俺に向けた。
「あなたは終わりなのですから、最期くらいおしゃべりしましょうよ」
俺の体が真後ろに引っぱられる。床を蹴ろうとしていた脚が、空を切る。
俺の体は意に反し、背後の壁に引き寄せられた。
いや、違う。これは引き寄せられているのではない。
落ちているのだ。
重力の向きが変わっているのだ。
俺は即座に体勢を整え、背後の壁に着地する。
俺の推察を肯定するように、棚、テーブル、機材、床に散乱していた設計図、作りかけの魔導兵装が落下してきた。
縦横無尽と刀を振るい、俺はそれらを細切れにする。反応が遅れれば潰されていたことだろう。




