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真相と大悪と修羅――1

 身柄(みがら)を拘束されたエリュは、ホークヴァン魔導学校の校長室に運ばれた。


 俺とスキールは、警察が到着するまでのあいだ、エリュを監視することにした。


 エリュは気を失ったまま、縄に縛られた状態で、力なく壁に背を預けている。


「信じられません。なぜエリュ教授がこのようなことを……」


 スキールが顔を覆って(なげ)いた。


 俺もスキールと同じ気持ちだ。エリュが悪事(あくじ)に走ったことが、いまだに信じられない。




 ――ボクにとっての発明は、自分が楽しむためにすることなんだ。言ったでしょ? ボクは好きなことをトコトン突き詰めたいんだ、って。




 生徒たちへの襲撃をやめるよう説得したとき、エリュはそう返した。エリュにとって、生徒たちの平穏よりも、顕魔兵装の実験のほうが優先度は高いようだった。


 たしかにエリュは、研究を愛し、発明に喜びを見出(みいだ)す人種だ。


 だが、俺とはじめて顔を合わせたとき、エリュはこうも言っていた。




 ――ボクのこれは、好きなことをトコトン突き詰めたいっていう病気みたいなものなんだけど、誰かの役に立っているならよかったよ。




 そう口にするエリュは笑顔を浮かべていた。嬉しそうに、照れくさそうに、はにかんでいた。


 あの笑顔が偽りだとは思えない。誰かの役に立てることを、本心から喜んでいたとしか思えない。


 だから、信じられない。エリュが生徒たちに牙を()くなど。


 エリュ。きみは本当に、望んで生徒たちを襲ったのか? きみは本当に、発明のために罪を犯したのか?


 (うれ)いを感じながら、俺はエリュを見つめる。


 ()()に気づいたのは、エリュを見つめていたからだった。


 エリュの装着している片眼鏡(モノクル)が、魔力を帯びていた。


 俺は怪訝(けげん)を得る。


 エリュが気絶しているのに、なぜ魔力を帯びているのだ?


 魔導具は、使用者が魔力を注ぐことで起動する。しかし、使用者であるエリュは気を失っている。片眼鏡が魔力を帯びているのはおかしい。


 不審に思い、俺は両目に魂力を集めた。審眼を用い、魔力の流れを注視する。


 俺は目を剥いた。


 どこからか伸びてきた魔力線が、エリュの片眼鏡に繋がっていたからだ。


 俺は表情を険しくする。


「尋ねたいことがある、スキール」

「は、はい。なんでしょうか?」


 眼差しを鋭くした俺に戸惑いつつも、スキールが応じた。


「魔導具は、遠隔操作(えんかくそうさ)ができるものなのか?」

「ええ。すべてがそうではありませんが、魔精などは可能です」

「では、エリュの片眼鏡は遠隔操作が可能なタイプか?」

「いえ、違います。エリュ教授の魔導具は解析の魔法式が組み込まれたもので、遠隔操作する意味がありませんから」

「そうか……」


 スキールの答えに(うなず)き、「ならば」と新たに問う。


「なぜ、エリュの片眼鏡は遠隔操作されている?」


 スキールが目を見開いた。


 俺は告げる。


「エリュの片眼鏡に魔力線が繋がり、どこからか魔力が送り込まれている。何者かが、エリュの片眼鏡を起動させているのだろう」

「まことですか!? だとしたら……」


 動揺するスキールに、「ああ」と俺は続けた。


「エリュの片眼鏡は、本来のものから別のものにすり替えられている」

「――――っ! 調べます!」


 スキールが(おのれ)のデスクに急ぎ、引き出しから筒状の器具を取り出した。


 戻ってきたスキールは筒状の器具を目に当て、取り外したエリュの片眼鏡をのぞき込む。


 スキールが息をのんだ。


「たしかに、組み込まれている魔法式が違います」


 硬い顔つきで、スキールが俺に伝える。


「これは解析の魔法式ではない。洗脳の魔法式です」

「やはりか」


 俺は確信した。


「エリュは操られていた。何者かに利用されていたのだ」

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