師匠と弟子と決闘――17
セシリアがこちらに向かって手を振っている。眩しいばかりの笑顔を浮かべながら。
「見事だ」
俺はニッコリ笑って手を振り返した。セシリアから見えているかはわからんが、手を振り返す気持ちが大切なのだ。
「本当に、勝ってしまうなんて……」
決着の知らせを聞き、いまだへたり込んでいるルカが、呆然と呟く。
「ケニー様は間違いなく天才です。セシリア様が勝利する可能性は限りなく〇に近かったのに……」
「バカを言うな」
俺はルカの意見を一刀両断した。
「どれほどの才があろうと、他人を見下して悦に浸っているようでは宝の持ち腐れだ。その程度の輩に、常に上を目指して努力し続けているセシリアが、負けるはずなかろう」
「……なぜ、そこまで強くあれるのですか?」
ルカが尋ねてきた。不思議とルカの表情は、縋り付く迷子を連想させる。
「才能の暴力に踏み潰されず、周囲の嘲笑に怯えることなく、どうして進み続けられるのですか? どうして挑み続けられるのですか?」
「芯があるからだ」
砂埃に汚れ、それでも輝いているセシリアの笑顔を眺めながら、俺は答える。
「何者にも折られない、芯が」
「……芯」
ルカが俺の答えを反芻した。
「何者にも折られない、芯……」
噛みしめるように反芻した。




