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師匠と弟子と決闘――16

 氷の棘が迫りくる。


 体勢を崩したわたしには、セイバー・レイを振ることができない。回避行動をとることもできない。


 わたしの敗北は必至(ひっし)だ。


 氷の棘がわたしを(つらぬ)こうとするなか、わたしは内心で思った。


 ありがとうございます、イサム様。


 体勢を崩したわたしには、セイバー・レイを振ることができない。回避行動をとることもできない。


 わたしの敗北は必至だ――一ヶ月前のわたしならば。


 けれど、いまのわたしにならできる。イサム様に鍛えていただいたから。


 わたしは両脚に魂力を集め、ふっ! と鋭く息を吐いた。


 武技『疾風』。


 わたしは高速の住人となり、目前に迫る氷の棘を、左にスライドすることで避ける。


「なっ!?」


 ホークヴァン先輩が目を()いた。回避されるとは思いもしなかったのだろう。予想外の事態に体が硬直している。


 好機(こうき)


 疾風を用いたまま、わたしはホークヴァン先輩に駆け迫った。


 ホークヴァン先輩がハッとする。


「ウ、ウイング・ウインド!!」


 二体のウイング・ウインドが風の刃を放った。


 無意味。


 わたしはジグザグに走り、風の刃を易々(やすやす)()ける。


 あっという間に距離は縮まり、ホークヴァン先輩はもはや目の前。


 ホークヴァン先輩が顔を引きつらせた。


 勝負を決めるため、わたしはセイバー・レイを脇に構える。


「まさか、こんなことになるなんてね……!」


 ホークヴァン先輩が歯を軋らせた。


「まさか――奥の手を使わなくちゃならないなんてねぇ!!」


 ホークヴァン先輩が口を裂くように笑い、魔銃を振り上げる。


 銃口の下には突起があった。そこに冷気が(つど)い、氷の結晶となり、パキパキと成長していって――氷の(つるぎ)となった。


 わたしは瞠目する。


「僕の『アサルト・ホワイト』は近接戦闘にも対応できるんだよ!!」


 ホークヴァン先輩の魔銃――アサルト・ホワイトは、氷の棘を剣にもできるらしい。従来の魔銃にはない機能だ。


 わたしはホークヴァン先輩の魔銃が最新モデルであると予想していたけれど、どうやら当たっていたみたいだ。


 思うなか、アサルト・ホワイトの氷剣が振り下ろされた。


「勝負ありだね、セシリアくん!!」


 ホークヴァン先輩が勝ち誇る。


 氷剣がわたしを斬り裂かんとして――空振りに終わった。


「…………は?」


 ホークヴァン先輩の()頓狂(とんきょう)な声がする。


 無理もない。視界から、わたしの姿が忽然と消えたのだから。


 わたしははじめから、ホークヴァン先輩の魔銃を警戒していた。わたしの知らない魔銃なのだから当然だ。


 魔銃の性能がわからないということは、ホークヴァン先輩がどのような手を用いてくるかわからないということ。


 ホークヴァン先輩は隠し球を持っているかもしれない。


 だから、わたしも手をひとつ隠すことにした。


 隠したのは『速度』だ。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 高速で走るわたしを目にして、ホークヴァン先輩はこう思っただろう。


 これがセシリア=デュラムの奥の手だ、と。


 セシリア=デュラムに、これ以上の手はないだろう、と。


 そう思わせることこそがわたしの狙い。


『七割の速度』を『最速』と勘違いさせることが、


『七割の速度』を『切り札』と勘違いさせることが、


 わたしの狙いだったのだ。


「イサム様から教わりました。『虚を衝く』のは有効な手なんです」


 全開の疾風でホークヴァン先輩の背後に回り込み、わたしはセイバー・レイを振るった。


 剣光一条(けんこういちじょう)


 障壁魔法が発動し、ホークヴァン先輩を守る。


 それは脱落の印。


 ホークヴァン先輩が膝をついた。


「バカな……この僕が、凡人なんかに……!!」


 ホークヴァン先輩がわななくなか、わたしはセイバー・レイを鞘に収める。


「『ケニー=ホークヴァン・ルカ=スチュアート』ペアと、『セシリア=デュラム・イサム』ペアの模擬戦は、『セシリア=デュラム・イサム』ペアの勝利です!」


 演習場外周:南部に立つ先生が、決着を知らせる。


 わたしはイサム様が向かった方角を見て、満面の笑みを浮かべながら手を振った。


「勝ちましたよ、イサム様!」

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