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師匠と弟子と決闘――7

「なんと立派(りっぱ)な……!」


 校門に立つ俺は、視界に映る光景に驚嘆した。


 堂々(どうどう)とそびえ立つ、六階建ての校舎。


 右に広大なグラウンド。左には、ガレー船がすっぽり収まりそうなほど巨大な工房。


 敷地は王城のそれよりも広そうだ。


 ラミア中央部にある、ミロス王国最大最高の魔導学校――ホークヴァン魔導学校の全容は、壮観(そうかん)の一言だった。


 驚きに打ち震える俺を見て、隣にいるセシリアがクスクスと笑みをこぼす。


「二〇〇年前はここまでの学び()はなかった。うっかりしていたら迷子になってしまいそうだ」

「ふふっ。大丈夫です。わたしが側にいますから」


 魔剣セイバー・レイを背負い、学生服に身を包んだセシリアが、ドンと胸を叩く。その胸元につけられたワッペンには、剣を()したマークとともに『2―S』と表記されていた。


「セシリアはSクラスだったな」

「はい! 入学当初はBクラスだったんですけど頑張りました!」

「適切な評価だ。セシリアほどの腕を持つ者は、なかなかいないからな」

「ありがとうございます!」


 セシリアが、ニヘー、と相好(そうごう)を崩す。頭を撫でたくなるほど愛らしい。


 ホークヴァン魔導学校のクラスは、生徒の実力別にS~Dの五段階に分けられており、セシリアは最上位のSクラスらしい。


 現代の者の実力を詳しくは知らないが、二〇〇年前の基準で測ると、セシリアの剣の腕前は同年代のそれを凌駕(りょうが)している。評価されて当然だ。


 セシリアの努力のたまものだな。師として誇らしいぞ。


「うむうむ」と頷いていると、セシリアがジッと俺を見つめ、格好を褒めてきた。


「イサム様の正装、とても似合っています」


 俺が着ているのは黒い執事服だ。普段、前合わせの上着にブカブカのズボンという楽な格好をしているため、少々落ち着かない。


「カッチリした服装ははじめてだが、問題ないか?」

「はい! ちゃんと着こなしています!」

「それはよかった。セシリアも似合っているぞ」

「え? あ、ありがとうございます」


 制服姿を褒め返すと、セシリアの顔が赤く染まった。


 ゴールデンブロンドをソワソワと(いじ)るセシリアは、口元が緩むのを(こら)えているように見える。


 俺は首を傾げた。


 セシリアの執事になると宣言した日からだろうか? 時折(ときおり)、照れているような、浮かれているような、そんな反応をセシリアが見せるようになった。


 たしか、『片時も離れたくない』と俺が告げたときも、セシリアは頬を赤らめていたな。なぜだろうか?


「うーむ……」としばし考え――諦めた。


 わからぬものに頭を()いても無駄だな。考えても答えがでないのだから仕方ない。


 思考を放棄(ほうき)して、俺はセシリアに手を差し伸べた。


「では、参りましょうか、お嬢様」


 冗談めかして言うと、セシリアの頬がますます赤くなった。


 なぜだ。

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