策謀と哀願と友達――3
ダウジング・アミュレットを頼りにひたすら走り、俺とセシリアはパンデムの外れに来ていた。
視線の先にあるのは寂れた鉱山だ。
パンデムは魔石の特産地。おそらくあの鉱山は、魔石を採掘され尽くして手つかずになったものなのだろう。
枯れた鉱山を訪れる者はまずいない。ティファニーたちはあの鉱山を拠点にしているようだ。
突入を前に、俺はセシリアに問う。
「ここから先は死地だ。覚悟はできているか?」
「はい」
迷いなくセシリアが頷いた。
「エミィちゃんを助けるためなら、どんな戦いにも身を投じます。エミィちゃんはわたしの友達ですから」
普段は柔和なセシリアの面持ちがキリリと引き締まっていた。戦に臨む戦士の顔だ。
ならば、これ以上俺が言うことはない。
「行くぞ」
「はい!」
俺とセシリアは歩き出した。
向かうのは、鉱山に空いた洞窟だ。
一見ではわかりづらいが、洞窟の入り口にはふたりの見張りが立っている。
見張りたちが俺とセシリアに気づき、顔を強張らせた。
「け、『剣聖』が来たゾ!」
「総員、戦闘準備!」
見張りたちが、洞窟内にいるのだろう仲間に呼びかける。
いくつもの足音と、慌ただしい声が聞こえた。『魔の血統』たちが、俺たちと交戦する準備をしているのだ。
戦闘準備は着々と進んでいるだろうが、俺とセシリアは速度を変えない。一歩一歩を悠然と踏んでいく。
やつらが戦闘態勢を整える前に叩けば楽に制することができるだろう。
だが、俺はあえてやつらに時間を与えた。
全力で立ち向かってきたやつらを、完膚なきまでに叩き潰すつもりだからだ。
どう足掻いても敵わないと、やつらに思い知らせるつもりだからだ。
俺とセシリアが洞窟の目前まで来たときには、三桁に達するだろう『魔の血統』たちが陣形を敷いていた。
その中央にいるウォルスが、警戒の眼差しを俺たちに向ける。
「まさか、ここを突き止めるとは思ってなかったッスヨ」
「エミィの思いやりが俺たちを導いてくれたのだ」
俺が言い、セシリアがダウジング・アミュレットを掲げた。
「余計なことを……」とウォルスが毒づく。
「お前たちは手を出してはいけない者に手を出した。我が友の子孫を手にかけようとした。決して許されることではない」
俺は刀の柄に手をかけた。
「容赦はせんぞ!!」
凄む。
俺の圧に怯えたのか、背後にある林から、鳥たちが一斉に飛び立つ音がした。
ウォルスたちも俺の圧に当てられ、顔面蒼白になっている。
「ひ、怯むナ! 『剣聖』といえど相手はふたり! こちらは何人いると思っていル!」
明らかに怯えながらも、ウォルスが仲間たちを鼓舞した。
徹底抗戦か。
望むところだ。
刃向かうなら、斬る。
俺が刀を、セシリアがセイバー・レイを抜き放つ。
同時、ウォルス側の魔銃士たちが、俺とセシリアに銃口を向けた。
「撃テェエエエエエエエエエッ!!」
号砲のごとく、魔銃が一斉に火を噴いた。