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紅桜歌~獣人の歌と千年の巫女~  作者: 81 MONSTER
第1章《死を率いし者》
5/12

第5節【グラン】


「安心しろ。兵には、手を出させない。お前は、俺の獲物だッ!!」



 間合いを詰めようとするグランに、槍を()き出した。刺突(しとつ)(かわ)し、右剣(うけん)の腹に()わせながら、グランが突出(とっしゅつ)してくる。間合いだけで言えば、双剣よりも槍の方が(はる)かに有利であったが、あっさりと間合いを破られている。


 その(さま)に、異様な気迫を感じた。ある種の覚悟にも似た怒りのような感情だと、何とはなしに思った。何故、そう思ったのかは正直、自分でも解らない。



 カイラートは呪文の詠唱を舌で転がしながら、グランの動きを予測する。突進力を利用しながら、左剣による突きが飛んでくる可能性は非常に高い。グランとカイラートの力量に、差異(さい)はほとんどと言ってないだろう。攻撃を認識してから、反応していては余りにも遅すぎる。いかに相手の動きを読むのかが、明暗を分けるのだ。



 にも拘わらずに、グランは感情によって動いているように感じられた。だからこその突進であるし、迷いがない分、速くて手がつけられないのだ。

 自分自身が生み出した詠唱陣(えいしょうじん)と、グランが生み出した詠唱陣が、しくも重なった。槍の重心を左にわずかに()らしながら、左に半身を(ひね)ってグランの突きを(かわ)す。先程までグランと密着していた槍は、すでに充分な間隙(かんげき)を得ている。



 ――詰まるところ、こちらに有利な射程圏(しゃていけん)である。



 槍を(すく)い上げるようにして、切り払う。

 後ろに飛んで、躱すのは解っていた。詠唱陣が完成していることも、把握している。



 互いの術が放たれるのは、同時であった。両者の術式は、全く同じである。だからこそ、相殺(そうさい)し合ってリセットさせた。

 二つの火球がつかり合って、爆炎が上がる。城内の至るところが、衝撃で()けられている。爆炎が収まる前に、カイラートが動いていた。



何故(なぜ)、お前は闘う?」

「俺が、王だからだッ!!」



 カイラートの槍を受けながら、グランは問い掛けに答える。

 爆炎の残滓(ざんし)が、両者の肌を()がしていく。



「国の異変に、気付いていない訳ではあるまい?」

「俺だって、この国が壊れている事ぐらい解っている」



 間合いを空けて、グランは言葉を続ける。



「だから、どうした。王が国のために闘って、何が悪いッ!!」

いや、お前は正しいさ。王が死ねば、国も滅ぶ。この国を活かすも、殺すのも……お前、次第だッ!!」



 グランが会話に乗ってくれたお陰で、時間を稼ぐことができた。竜笛(りゅうてき)の音を聴きつけて、カイラートの愛騎竜(あいきりゅう)であるヴァルキリーが到着した。甲高い飛竜の咆哮(ほうこう)が、風と共にグランを打ちつける。不意を突かれて、態勢を崩している内に、カイラートはヴァルキリーに騎乗した。


 これで圧倒的に、カイラートが有利になった。



「知った風な口を、聞くなッ!!」


 グランの持つ双剣の周囲を、王鱗紋(おうりんもん)が包み込む。



「すでに、戴冠(たいかん)は済んでいたのか……」


 非常に、厄介な事態である。



 王位を継ぐ時は、大抵の国は王鱗紋(おうりんもん)も同時に継承する。

 王鱗紋は聖地アリアドスに入る鍵ではあるが、その役目はそれだけではない。王鱗紋を起動するだけで、身体能力の向上と魔力を増加させる。集団である場合は、特定の条件を満たせば家臣の力すらも増加させる。この国の現状を考えれば、脅威になるのはグランだけではあるのだが、それでも戦局が不利に傾く可能性は大いにある。



「双竜剣で、今から斬り裂いてやる。俺を怒らせた事を、後悔しやがれッ!!」



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