表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅桜歌~獣人の歌と千年の巫女~  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第1章《死を率いし者》
10/12

第10節【グラナス】



「愚か者達よ……死を、受け入れるが良い」



 異常な密度の魔力が、グラナス王を包み込んでいる。その質量は飛竜隊を、壊滅状態へと追い込もうとしている。




 飛行する飛竜たちが、重力によって地に叩き付けられていく。グラナス王の得体の知れない力が、飛竜の身体を粉砕(ふんさい)している。全身の骨が砕ける音。吐き出される(おびただ)しい量の血。騎乗していた男の悲壮(ひそう)な表情。阿鼻叫喚(あびきょうかん)を思わせる飛竜隊の悲鳴が、グラナス王の心を甘く()でている。



 死の微睡(まどろ)みほど、居心地の良い物はない。それを知らぬ愚かな者達には、死を()って教えなければならない。



 そうする事によって、死に魅了された者は、等しく我が軍門に下るのだ。死した兵や飛竜の(むくろ)が、音も立てずに起き上がり始める。最早(もはや)、自分が手を下す必要もないようだった。



 死を(まと)った兵団が、残る飛竜隊を襲い始めた。恐怖に()られた人間は恐ろしく(もろ)い。(かつ)ての自分がそうであったように、愚鈍(ぐどん)な眼では何も()えないのだ。




「死を受け入れよ。さすれば冥皇(めいおう)さまの祝福が、愚かなお前達をお救いするだろう……」




 先程まで味方であった者が死に、敵として(よみがえ)ることは動揺と恐怖を生む。迷いや(まど)いは、隙を生み出して正しい判断力を根こそぎ奪い去ってしまう。最早(もはや)、彼らは恐怖の傀儡(かいらい)だ。まともに闘える者は、残ってはいない。壊滅(かいめつ)は時間の問題である。




 此の国は決して、滅びる事はない。



 死を()って、生まれ変わるのだ。そのために自分は、冥皇と契約を交わしたのだ。


 死を率いし暗黒の(おう)は、寛大(かんだい)な『抱擁(ほうよう)』を自分に与えてくれた。死は等しく、皆を救ってくれるのだ。




 先刻、水竜皇(すいりゅうおう)仕留(しと)めそこなったのは失敗であったが、間もなく息を引き取るだろう。そうなれば、我が軍はより強固(きょうこ)となる。




 巫女(みこ)が一人、水竜皇の元へと向かったようだが、何も出来ぬはずだ。ダイナー帝国はすでに、ゾメストイのクーデターによって()ちている頃だろう。ゾメストイとは同盟関係にあるため、巫女を殺す訳にはいかないが、放置しておいても問題はなかった。それよりも問題なのは、不肖(ふしょう)の息子であるグランの方だ。あれに双竜剣を継承させたのは、失敗であったようだ。




 (いず)れは、殺さなければならない。



 己に仇為(あだな)そうとする者には、一切の容赦(ようしゃ)は与えない。



 巫女を聖地アリアドスに踏み入れさせない事を条件に見逃しているが、万が一にも条約を破ればゾメストイとて容赦(ようしゃ)はしない。冥皇の加護を得るものは、そう何人も必要ない。




 今の自分には、素晴らしい力がある。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ