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-第90話-

「家にくるくらい仲がいいんだし持っといて損はないと思うんですけど、交換してやってくれませんか?」


迷っている俺と梨花さんに対し故意ではないのだろうが、結菜奈からの追撃が刺さる。


というかなんで俺は交換してもらう側で下手に出る前提で話してるんだよ、結奈さんや……。


普通に梨花さんとは対等な立場で交換したわ!そう謎の心の中でのツッコミが出てしまうほど俺の頭は混乱していた。


「えっと……」


梨花さんはやはりこういう人から詰められる状況にも慣れていないからか、うまく口から言葉が出ていない。かくいう俺もそんな経験ないのだから助けることなんてできないわけだが。


「結奈ちゃん……梨花も困ってるみたいだしちょっと考えさせてあげたら?」


本来であれば俺が出すはずであろう助け船は予想外にも俺の隣から聞こえてきた。


そう、安芸さんが表情ひとつかえず、視線は参考書のまま結奈に向けて注意していたのだ。


「すみません、安芸さん。別に私梨花さんを困らせるつもりは……」


結奈は結奈で仲もよく尊敬している先輩からそう言われるとは思っていなかったらしく、さっきまでの威勢のよく切れ味のあった言葉とは裏腹に今の呟きは相当に弱々しいものだった。


「梨花は人見知りなところもあるから、山口くんと連絡先交換するまでの仲じゃないんじゃない?」


安芸さんは「でも私もそんな関係になって欲しいと思ってるよ」と付け加えながら俺と梨花さんを交互に見ながら言った。


安芸さんを裏切っているような気もして心が痛むが、安芸さんは実際そう思っているとしてもせっかく出してくれた助け舟だ。ありがたく乗せて貰おう。


俺はそんな意思を含めて彼女に熱い視線を送る。すると梨花さんもその意味を汲み取ってくれたのか、安芸さんに賛同してくれた。


「そうですね、RINEは親密な関係になってからでしょうか」


梨花さんのその言葉は確かに安芸さんの言葉に同調するために作り出されたものなのかもしれないけれど、どこか彼女の本心でもあるかのように感じた。


「そうですか……。変なこと言っちゃってすみません」

結奈はバツが悪そうに頭をかいていた。


「でも、お兄ちゃん振られちゃったね。ふふっ」


はずだったのだが、いつも通りすぐに立ち直り俺のことを煽るように揶揄ってきた。


まあ、結奈もいくら仲が良くなったとはいえ、一回あっただけの人たちの中に放されて心細かっただろう。今俺をからかっているとはいえ、今日一番の笑顔が見れたし、細かいことは水に流そうと思えた。


「じゃあ、今日は時間も押してきたし今日は解散にしようか」


「ああ、疲れたな」


「ふふ、こんなんで疲れててもらったら困るよ。でも今日もちゃんと進んだし、数学はいいでしょう。そろそろ授業のところまで追いつきそうだしね。自習分よろしくね」


「ああ」


結奈の邪魔が入ったもののきちんと勉強していたわけだが、安芸さんの掛け声に合わせて、二人は帰り支度を始め、結奈も自分の勉強道具をかき集めだした。


それにしてももう追いつくのかにわかには信じ難いな……。


まあ、他の教科はほとんどからっきしだから今日の夜も休んでいる暇はないな。


「あら、もう帰っちゃうの?まだ五時なのに……。しんちゃん時間は早いけど送っていってあげなさいって言おうと思うけど『知り合い』ならいらないかしら」


全員が身支度を終えたタイミングを見計らって、階段を降り玄関に到着し解散ムードだっただが、お母さんが絡んできた。


「いや、友達だからな。送って行こうか?」


さっき友達に正式になったことをお母さんに自慢するために、そう安芸さんに声をかけたわけだが


「いや、迎えが来るし大丈夫だよ」


と断られててしまった。


まあ迎えの車の方が安全なのは周知の事実なわけだし反論のしようがない。



「あはは、お兄ちゃん。今度は安芸さんにまで振られてる」

さっきからやけに結奈が賑やかだ。あとでわからせる必要があるかもな。


「じゃ、今日はお邪魔しました」


「ばいばい、山口くん。結奈ちゃんも」


「はいはーい、また是非来てね」


今度こそ解散だと体現するように口々に別れの言葉を告げながら三人はドアを潜っていった。


お母さんまでテンションが高かった気がするがきっと気のせいだろう。

最近ちょっと忙しくて更新まちまちになってしまっています。

すみません。ぼちぼち投稿していきます。

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