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-第79話-ピンチ再び

「あれって安芸さんじゃない?」


女子生徒のものと思われる声がした。


後方15メートルほどのところから聞こえたから、ちょうど十字路になっているところからだろう。


「家に帰らずこんなところで集中してやってるなんてさすが安芸さんだね」


「私声掛けてこようかな」

既視感のある台詞が聞こえてきた。


前回は姫芽さんがいたからなんとか1度は回避出来だが、今回は俺と安芸さんの2人きり。


庇ってくれる人がいないどころかこの状況を見られること自体がまずいのだ。


「山口くん、後ろ」


安芸さんも女子生徒たちに気がついたようで、俺に知らせてくれた。


「ああ、気づいてる。この状況前回より悪いよな」


「確かに......私タイミング見計らって御手洗でも行ってこようか?そうすればあの子たちも気のせいだったって思ってくれるだろうし」


前回も同じような作戦を使ったような気がするが、確かにそれが最善策だろう。


「わかった。まだこっちに来る様子じゃないし安芸さん頼んだ」


「じゃ、行ってくるね」


幸い彼女たちは安芸さんがいなくなったことにも気が付かず、まだ安芸さんのところに行くか決め兼ねてる様子だ。


「はあ......」


俺は安芸さんが女子生徒たちのいる方向とは逆の道を進んでいき、曲がって姿が見えなくなったところで安堵のため息をついた。


学校一の美少女が相手となると勉強を教えてもらうのも一苦労なのか......。


「あれ、安芸さんどこ行った?」


「えー、でもさっきは確かにいたわけだし、とりあえず向こう行ってみようよ」


前言撤回、まけたと思っていたのは俺たちだけだったようだ。


女子生徒たちは見間違えだということを念頭に置くことなく、こちらまで歩いてこようとしていた。


これは本当にピンチだ――そう思った時だった。


「やっほー、華ちゃん」


女子生徒たちの方から見知った声が聞こえた。


「あ、姫芽ちゃん、やっほー」


「姫芽ちゃんこんなところでどうしたの?」


声の主はやはり俺の見立て通り姫芽さんだった。


隣には人見知りしてなのか声は発していないが梨花さんもついている。


あれ、でもなんで姫芽さんたちが?


「んー、なんでもないよ。たまたま通りかかったら華ちゃんがいたから」


「そっか。でも姫芽ちゃんがいるってことは安芸さんもいるってことだよね?」


「そっちのいつも安芸さんとか姫芽ちゃんと一緒にいる茶髪の子もいるし」


「あ、どうもです......」


梨花さんは突然話題を振られてしどろもどろになっている。


この感じやはり姫芽さんたちは偶然通りかかっただけなのだろうか。


「うんうん、安芸さんは今日は家で勉強してるよ。学年一位キープするぞーってね」


その学年一位の勉強時間削ってまで勉強教えてもらっているのが俺ですよ......。


本当に申し訳なくなってくる。


というか姫芽さん友達に対しては安芸さん呼びなんだな。


学校では使用人ってこと隠してるんだっけ。


「それよりさ、華ちゃん、向こういいお店あったんだけど」


「えー、私たちの見間違えだったのかー。いいよ、行こ」


「ほら、梨花もついておいで」


「え、私も行っていいんですか?」


「もちろんだよ。みんなで行こ」


梨花さんの言葉に対して華と呼ばれた女子生徒が明るく答える。


梨花さんも関わりを増やすならああいう明るい人からがいいんだろうな。


姫芽さんたち4人はあそこから見て俺たちのいるカフェとは反対側に進んでった。


去り際に梨花さんがこちらに向かって手を振ってきた気がした。


たまたま通りかかっただけなら俺のことに気がついてるはずもないので.....。


ここまでの事象から示されることは姫芽さんたちは俺と安芸さんを2人きりにしたうえで影から見守ってくれていて、ピンチになった今助けてくれたということだろう。


これは姫芽さんや梨花さんに大きい貸しが出来てしまったな......。


またも助けて貰って回避とは、勉強ができるようになっても安芸さんと対等に関われる日は遠いな。

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