-第75話-
と、まあこんな感じの過去があって今まで勉強なんてしてこなかったが、お願いしてきている立場の美少女からの期待に応えようとしてまた机に向かったり勉強会したりと昔に戻ろうとしてるなんて浮かれているみたいでなんか嫌だな……。
まあでも宣言してしまったものは仕方ない。安芸さんのためでもあるわけだし、お願いを叶えるためにも今は試験勉強が第一優先だ。
俺は自分の現状なんて考えるのをやめようと首を横に大きく振り、机に開かれて置かれいる数学の教科書と参考ページの開かれたスマートフォンに目を戻した。
長く続かない集中力を活かすためにもやれる時は真剣にやろうと問題をカリカリと解き進めてしばらく経った時、スマートフォンから着信音が鳴り、上の方に安芸さんからのメッセージが表示された。
『山口くん勉強頑張ってる?』
俺は通知を見ていつものように反射的に押してしまいそうになったが、内容を見て思いとどまった。
俺がすぐに返信してしまったら勉強もロクにせずにスマートフォンをいじってサボってるように安芸さんから思われてしまうのではないかと思ったからだ。
だから俺は指で通知をスワイプしてどかし、もう一度問題に取り掛かっていたところでまた同じように通知が鳴った。
『明日はどこでやる?』
そのメッセージを見ると、返信を待たせてしまったら姫芽さんにしてしまった「既読スルー」と同じようにマナー違反になってしまう気がしたのですぐ返すことにした。
勉強してて気がつかなかったとか、寝てたとか色々と無視する言い訳も思いついたが、教えてもらう立場なわけだしそういうことはしたくなかった。
『今日と同じところでいいんじゃないか?静かでやりやすかったし』
『あれ、返信早くない?ちゃんと勉強してる?』
『もちろん。今もしていたところだ』
『だったらなんでこんなに返信早いの……ってまあいいや。了解、今日のところね。山口くんって静かなところの方が勉強できる人?』
『そんなのあるのか?安芸さんは?』
勉強は静かなところでするに限るだろう。なんでわざわざ騒々しいところでやらなきゃいけないんだよ……。
『私……?私はどこでもいいけど。どこでするかだなんてことで結果が変わっちゃうなんてそんなの勉強じゃないじゃん。今日もちゃんとやってくれてたし静かな方が良さそうだね。』
『まあ。そうなのかな』
『じゃあ、明日は2人きりでやらない?』
すぐにレスを返していたわけだが、驚いて一瞬固まってしまった。
今はテスト期間な訳だしおそこの店にも人が来てもおかしくない、スイーツバイキングの時のように目をつけられてしまうかもしれない。
不幸中の幸いかこの間はなんとか逃れることができたが、今回もそうとは限らない。
『俺はいいけど、安芸さんは大丈夫なのか?』
『え、私から誘ってるんじゃん』
『いや、そうじゃなくて、よく姫芽さんが言ってる社会的立場とか』
一緒にいるだけでも危険があるのに、安芸さんが俺に親身になって勉強を教えているところを見られたら、男子たちは嫉妬に狂うだろうし、釣り合っていない俺と関わってるとなると彼女の顔に泥を塗ってしまうことになるだろう。
『まあ、大丈夫じゃないかな、姫芽たちは私からなんとか言いくるめておくから』
『ああ、なら俺はいいけど』
『うん、今日と同じくらいの時間であそこの店でよろしくね』
話に区切りがついたので俺はすぐにRINEを閉じ、また数学のページに戻し、姿勢を正して勉学の世界へと戻っていった。




