-第74話-過去③
俺は春樹の家を離れ優斗の家へと向かった。
理由はもちろん春樹に謝らせることや、なんでこんなことになったのか理由を聞くためだ。
俺は優斗の住んでいる春樹の家から徒歩20分ほどのところにある長屋に着いた。
「お、親鸞か」
俺がインターホンを押そうとしたところ2階の窓から声がした。
きっと偶然窓から外を見てたら俺が来ているのが確認できたんだろう。
「親鸞、おはよう。今日お前が来たってことは話はひとつしかないんよな」
優斗は玄関から出てきて春樹と同じような反応をした。
「ああ、多分想像通りだ。春樹のところにもさっき行ってきた」
「そうか。あいつどうだった?」
「すごく落ち込んでたよ」
「まじか.......いくら悪気はないとはいえ申し訳ないことをしたな......こんなところで立ち話もなんだし中に入らないか?」
優斗はバツが悪そうに頭をかきながら言った。
「いや、家の中で喧嘩始めてもあれだろ?ここで話そう」
「ああ、わかった。それで俺になんか言いたいことでもあるのか?」
あるに決まってる。
なんでこんな馬鹿なことしたんだ。本当に佳奈さんのことが好きなのか。一発殴らせろ。
色んな感情が湧いてきた。
でも優斗の顔を見ていると不思議と怒りたい感情はどこかに行ってしまった。
「もちろん、簡潔に言うと謝る気はないか?」
「まさか、俺は謝るつもりは無いぞ。俺はズルして佳奈と付き合ったわけじゃないし、ここで謝ったら俺が悪役みたいになっちまうじゃねえか」
「でもここで優斗が謝ってくれれば全てが丸く収まる。優斗が今後佳奈さんと付き合おうが付き合わまいが、春樹と仲良くすることができるはず」
「お前は俺たちとこれからも仲良くしたいってことか?」
「当たり前だろ。友達なんだから」
「そっか……」
優斗は俺の言葉を聞くと、考えるように頬に手を当てた。
「いや、でも俺は悪いことをしていないのに謝る気にはなれないな」
「そっか……」
「ただ、俺はこれからも春樹と仲良くしたいから、謝らないって公言した後にこういうのはおかしいかもしれないけど許してもらえるんだったらまた一緒に遊びたい」
優斗は叶わない願いを俺に伝え、満足したかのようにつま先を扉のほうに向けていた。
「まあ、伝えておくよ。佳奈さんと楽しくな」
俺は付き合い始めた友人に初めて祝福の言葉を送り、優斗の家を後にした。
翌日、翌々日と俺はその日と同じように2人の家を訪れたり、2人をまた遊ばないかと遊びに誘ってみたりと万策を尽くしたが、俺の望む未来へと変わることはなかった。
きっと運命の女神様も結奈のときの一回しか微笑んでくれないのだろう。
長い夏が明けても2人の仲が戻ることもなく、幸い春樹も優斗も俺とは仲良くしてくれていたが、結局俺はどっちつかずになってしまい、関わりづらくなって次第に話さないようになっていった。
春樹と優斗以外ろくな友達も作っていなかった俺は次第に孤立していった。
皮肉なことに優斗と佳奈さんも二学期が始まってしばらくした頃には別れたと噂で聞いた。
俺たちの友情を引き裂いた元凶でも、せめて形に残ってくれれば俺や春樹も報われたのになとも思う。
本当に運命の女神様は酷い人だ。
春樹に勝ちたい、優斗に負けたくないという気持ちで勉強も運動も頑張っていた俺だったが、必死になんて頑張っても春樹と優斗の仲が戻ることはなかったことから努力が嫌いになったことも相まって二学期からはどんどんと落ちぶれていった。
そんなやつにクラスのやつらは最初こそ春樹たちのことについて励ましてくれたり、心配してくれたが、すぐに人は離れていった。
――その夏、俺は友情とともに人として大事な向上心まで失ったのだった。
早いものでもう7月入りましたね。5月に連載始めたからもう季節がひとつ変わってしまったんですね。
作中だとまだ2週間くらいしか経ってないんですけどね.......。




