-第72話-過去①
電車は問題なく最寄り駅に到着し、数分歩いて無事に家に着いた俺は、ご飯までの1時間弱の時間を数学の続きの勉強に使おうと意識高く机に向かっていた。
数学の教科書を見ると今日の安芸さんとの勉強会がどうしても思い出させられる。
中でも酷すぎたあのテストの結果が......。
俺が勉強しなくなったのが中学1年の2学期か......。
なんだか懐かしさを感じながら俺はそう思った。
※※ ※※
――中学1年の2学期の前、すなわち夏休み。
世間一般の中高生は普段の退屈な日常から切り離され、1ヶ月以上も休みという非日常を部活の大会に打ち込んだり、ダラダラと過ごしたり、旅行に向かったり、はたまた夏期講習に通ってみたりと有意義に過ごしている。
そんな特別な夏休みに俺にとって大きな出来事が起こっていた。
「お前今なんて言った」
俺の友達である春樹が鬼のようの形相を浮かべながら、もう1人の友達である優斗に向かって怒鳴っていた。
「だから、俺佳奈と付き合うことになったんだって」
佳奈というのは俺たち3人のクラスに在籍するとある女子生徒。
以前春樹が好きだと照れくさそうにしながら俺たちに打ち明けていたことを俺は鮮明に覚えている。
なのに優斗はどうしてこんな裏切るようなことをしたのだろう。
「なあ、2人とも1回落ち着けって」
「春樹が一方的に怒ってるだけだろ」
優斗は無責任にそう言い放つ。
どちらかというと整った顔立ちの優斗がそうしている所は妙に絵になっていた。
※※ ※※
思えば夏休み前からおかしかったのかもしれない。
俺たち3人はクラスの中で一、二を争うような運動神経も頭の良さも容姿も持ち合わせていなかったが、そのどれにもそれなりに力を入れていたためクラスの中でも2番目に目立つくらいのグループだった。
スポーツテストや球技大会があれば3人のうちで優劣をつけ合い、定期テストがあれば3人で集まって勉強会を開いて対策する。
思えばそんな切磋琢磨しあっている様子が周りからクラスで2番目くらいに目立つ存在と評価される理由だったのかもしれない。
俺は春樹と優斗とことを心から友達だと思っていたし、2人に置いてかれないように勉強も運動も対人関係も自分なりに頑張っていた。
そんなある日――期末テストの確か4日前だったそんな日に優斗は俺たちの誘いを初めて断った。
「悪い、今日は一緒に勉強出来ないんだ」
「ああ、分かった。用事があるなら仕方ないな。春樹行こうか」
テストの度にという言い方はまだ1回しかテストを経験していない俺らが言うのはおかしいのかもしれないが、1回も誘いを断られずに一緒に何度も勉強していた優斗が俺たちの誘いを断るというのは、約束を断られた怒りの感情よりも驚きや何かあったのではないかという心配の感情を強くさせるものだった。
結局その日以来優斗はいつもと同じように俺たちと勉強会をするように戻ったが、あの時のことが今回の亀裂が生まれたに関わっていないとは考えにくかった。
※※ ※※
「優斗、お前には俺の気持ちを話したことがあるはずだ。なんでこんなことしたんだ?」
「なんでって可愛い女の子から告白されたら誰だってOKするだろ。せっかく中学生になったんだし彼女の1人や2人を作らないまま卒業なんて悲しいじゃないか」
どんどんと優斗に距離を詰めていく春樹に対し、優斗は冷静に答えつつ春樹との間を一定にするべく去がっていた。
優斗は元から女好きというキャラではなく、どちらかというと恋人よりも友人や部活動を優先するような人だと思っていたため俺も驚いた。
「ああ、もう分かった。もう二度と俺にかかわらないでくれ。以上だ」
「あ、ちょっと春樹待てよ......」
走っていく春樹に対しこの場でこの喧嘩に蹴りをつけないとまずいと思った俺は、咄嗟に声をかけたが時すでに遅く春樹にその声が届くことはなく彼の姿はすぐに消えて行ってしまった。
あと2話ほど過去編続きます




