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-第68話-改心

朝――いつも通りの時間に起床し、駅へ向かっていた俺は珍しく眠たそうに目を擦っていた。


昨日は結局勉強らしい勉強というのはほとんどできなかった。


まず何の教科から勉強を始めようかと迷い、無計画な俺は教員の言葉が少しだけ頭の片隅に残っていた生物の教科書を開いた。


初めのうちは「へー、そんなもんなんだ」と指を咥えて文章をスラスラと読んでいたが、途中から全く文字が頭に入ってこなくなってしまったのだ。


そう、集中力が切れてしまったのである。


小学校と中学校の上がってからのしばらくは家では目一杯遊んでいたものの、学校では今のように時間が過ぎるのを待っているのではなく、しっかりと授業を聞いて学生としての本分を全うしていた。


だが、やはり3、4年のブランクというのは大きいもので、努力すればテスト自体はどうにかなるのかもしれないが、集中力というのは日々継続的に勉強をして初めて身につくものであるためこの試験勉強を効率的にやるのは難しいことなんだなと実感した。


そう意味では安芸さんの言葉はしっかりと的を得たものであったので、彼女のレベルはわからないが少なくとも彼女のブランドイメージにあうような優秀な成績を収めていることはわかったので、彼女の話はよく聞き、教えてもらうことが大切だなと気づけた。


まあ、こんな集中力では安芸さんに迷惑をかけてしまうことは確定なので、いつも安芸さんと出かける時に利用させてもらってる文明の力たるインターネット様に集中力の上げ方を教えてもらおうと決意できた。


学校に着いた俺はいつもなら授業はノートも取らず、ご飯だけを楽しみに授業時間を過ごし、唯一の楽しみの昼食を終えたら、あとは家に帰ることをモチベーションに残りの2限を過ごすという何のために学校に行っているのかわからないいつもとは違い、しっかりとノートを取って化学や物理の演習問題なんかもしっかり解いていた。


もちろん今までの前提がないため解けることはなかったが、解説を聞いて納得したりと、実に勉強意欲のあるような過ごし方をしていた。


そして放課後――話す友達もいない俺はいつものように駅へ直行したが、家へ向かうために電車に乗るのではなく、駅ビルの先週訪れたコーヒーチェーンへと足を踏み入れ、安芸さんの到着を待っていた。


「いつも待たせちゃってごめんね」


背後がら聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「やっほー、山口くん」


「席取っといてくれてありがとうございます」


どうやら安芸さん御一行が到着したようだ。


「じゃあ、私たちは買ってくるから、もうちょっとだけ待っててね。」


安芸さんは肩にかけていた鞄から自分の教科書をおもむろに取り出し、机の上に積み重ねた後、そう言い残してカウンターの方へ2人を連れて向かって行った。


俺もそろそろやるとするか……と思い俺も鞄のチャックを開ける。


そして中から教科書類を取り出したわけだが、やはり思うのが量が多いということだ。


各教科それぞれ教科書があるわけだから必然的に10冊以上ある教科書を、学校からここまでの15分ほどの道のりの間肩に担いできたので体の節々が痛くなっている。


だがここで一つ疑問が生まれる。安芸さんも俺と同じようにこんな愚かなことをしていたということだ。


安芸さんが考えなしにこんなことをするはずがないので、なにか理由があるはずだが。


「山口くん、注文の間も待たせちゃって本当にごめんね。次からは時間ずらすにしてももっと早くくるようにするから」


そう安芸さんのことを考えていたら、本人がカップと小さなお皿を両手に持って帰ってきた。


「俺は時間有り余ってるし大丈夫だよ。安芸さんがしたいこと終わってから俺のところに来てくれればそれでいいし」


なんか彼氏面してないか……俺?急に自分の言ったことが恥ずかしくなってきた。


「い、いや、そういうわけじゃなくて……」


「どうしたの?やっぱ優しいね……」


最後の方はよく聞こえなかったが、良かった。俺に対して引いてるというわけではなさそうだ。

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