-第67話-約束
『ああ、それで頼む。場所はどうするんだ?』
『うーん、私の家は多分ダメだしこの間みたいなカフェでやるかとかしか思いつかないかな』
確かに今までのように特定のどこかで遊びに行こうという計画ではなく、ただ机と話せるスペースさえあればよくそんな選択肢無限にあるだから、逆に場所選びの難易度は上がってくる。
安芸さんの家という案が出たのなら、俺の家でもいいと思うが、思春期の女の子を家に連れ込むのは対外的にも当人間でも心証はよくないのだろう。
ご令嬢なのだから対外的なイメージは普通の女の子を招いた時とは数倍、いや100倍ほどは違うだろう。安芸さんがいいと言いそうな雰囲気になったらどことなく提案してみよう。
『まあそうだよな......。毎日って言ったらあと5日、6日あるわけだし、おいおい決めていくって感じでいいか?』
『うん。それでいいね』
『今更だけど、本当に毎日やるのか?俺自分で言うのもなんだけど成績悪いし、安芸さんの足引っ張っちゃう気がして、一日だけとかならまだしも毎日となるとすごく申し訳ないだけど』
『全然大丈夫だよ。山口くんがいるからって集中力落ちたりしたら、それは私の能力不足だし。山口くんが無理に私のこと引きずり落とそうとしないことはもう分かってるしね』
どうやら安芸さんから相当信用されているらしい。
『それで姫芽と梨花だけど......山口くんが呼びたいなら呼んでもいいよ』
『じゃあせっかくだし呼ぶか』
『ふーん、山口くんは2人と一緒がいいんだ......じゃあ私から声掛けておくね』
『ああ、ありがたい。話蒸し返すようで悪いんだがなんで毎日なんて言い出したんだ?勉強なんて1日一緒にやれば済むものだろ』
『山口くん何言ってるのかな......?勉強は積み重ねだよ。それに私が教えた方が山口くんだって伸びるでしょ』
どうやら完全に厚意でやってくれるようだ。人に教えたら自分の理解度も深まるし両者win-winという考えなのだろうか。
『それに山口くんが赤点なんて取ったら私を幸せにしてくれる時間が減っちゃうし、仮にみんなに関係ばれた時に成績悪いやつと関わってるって思われたらいやだし』
『あ、ああ、期待に答えられるように頑張るよ』
友達や恋人としてじゃなくても安芸さんと関わるということはそういうことなのだろう。
天上人に合うのは高スペックな人だけ。
俺にまず勉強から入ってくれということなのだろう。
『うん、頼むよ、山口くん』
『ああ、任せてくれ』
『うん、じゃあ、おやすみ。いつも通り学校終わったらすぐね』
『分かってる。おやすみ』
おやすみと人とましてや異性と送り合う人生が来るとは思っていなかった。
俺は安芸さんの人生を幸せに変えるために日々行動しているけれど、案外俺も安芸さんに人生を支えられてるのかもな。
テストまでは明日から1週間という短い期間なわけだし、少しだけ俺も努力ってものをしてみるか.......。
安芸さんに全部任せるのも悪いと思い俺は勉強をする決意をし、柔道選手のような覇気を出すポーズをした。
その日俺は珍しくまだページを開くとミシミシという教科書を広げて机に向かっていた。




