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-第66話-お誘い

『そういえば山口くん、勉強はしてる?』


俺は画面に表示された短い文章を一読し、フリーズしていた。


画面上部には一昨日撮った写真の下部が少しだけ表示されていた。


今ただのメッセージを見て固まっている理由は明白俺は成績が悪いからだ。


それも才能がないのではなく努力という言葉が嫌いだから、なにかに熱心になれないから勉強をせずに結果として成績が悪いのだ。


普段の俺の生活を見ればわかるように授業はぼーっとして時間が過ぎ去るのを待ち、家に帰ってからも受験まであと2年を切っているにも関わらず机に向かうことなくゴロゴロとして次の日の朝を待っている。


そんな俺の生活に勉強というものが組み込まれるはずがなくこの有様なわけだ。


だから成績最上位の安芸さんに『勉強してる?』と聞かれて『してない』と答えられるメンタルを持ち合わせていない俺は困惑していたのだ。


この間既読スルーをして姫芽さんがすごく悲しんでいたので今日は早く返さなければと思い事実そのまま送ってしまった。


『ああ、もちろん一切やってない』


『それ、堂々と言うべきことじゃないよ……。2年生が受験の天王山ってよく言われるわけだしやっとかないと後々後悔するよ』


安芸さんがガラでもないような、塾講師のような聞き慣れたフレーズを送ってきた。


『そんなこと、俺もわかってるよ』


『え、そうなの……。じゃあ山口くんってもしかして成績いいの?そんな噂は聞いたことないけど』


俺はそもそも影が薄いわけだし、全校生徒2000人を誇る我が校の特徴も相まって俺の噂なんて流れたことがないだろう。


『いや、全然。赤点もあったし』


『まぁ、苦手教科は誰にでもあるよ!私も全然あるし』


安芸さんはどうやら俺の赤点教科が少ないものだと思っているっぽい。


自慢ではないが赤点でない教科を数えた方がはやいくらいだ。


安芸さんからしたら考えられないものだったのだろう。


『まぁ、そうだな。前回は8教科くらいかな』


『え……』


安芸さんからの返信が1分、2分とこない。


今までお互いに相手からのメッセージを確認したと同時に返していたため、ここまで間が空いてしまうと俺の発言がよほど悪かったのではないかと心配になってしまう。


今のは俺の言葉が原因だと思うから九分九厘俺が悪いのだろうけど。


『ねえ、山口くん。もしよければだけど私と勉強しない?』


ようやく通知音が鳴ったかと思えば、衝撃の内容だった。


学校一の美少女であり、成績が悪いとわかっている俺を勉強に誘ってくるということで勉学にも自信があると思われる安芸さんとの勉強会。


俺は勉強ができるようになりたいとは思っていないが、客観的に見てこの誘いは俺に都合が良すぎるように感じる。


俺と彼女の関係は、俺が安芸さんの幸せを手伝うという言うなれば俺が提供者側のものだ。


俺が与えないのであれば人気者で高スペックな安芸さんと接点を持てるはずがない。


だからこの誘いは絶対に断るべきなんだ。俺たちのこれからのためにも……。


でも俺の手は考えとは正反対の文字を打っていた。


まるで体を乗ったられた操り人形のように俺は意識と反対のことを打ち込んでいく。


『ぜひ一緒にやろう。勉強教えてもらえるってことでいいんだよな?』


『うーん、まあ基本的にはそのつもりだよ。山口くんが得意な教科があるなら私も教わりたいけど……』


もちろんあるわけない。


それを予測していたかのように安芸さんの文章から全く期待が伝わってこない。


『えっと、じゃあ、テストまで一種間切っているわけだしこれから毎日私とやる?』


いつもの○○日の○曜日にしようね。というまるでデートの約束なような予定の決め方ではなく、毎日というのは友達同士の予定の決め方のように感じた。


本来俺たちの関係性なら前者の方がいいのだろうけど、俺は友達ができたかのように感じたため、少し嬉しくなった。

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