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-第62話-シンデレラ


「さて、次で最後の曲になりました」


直前の曲で結婚式で着そうなドレスのような衣装から着替え、俺らの学校の制服とはまた違ういかにも青春といった感じの甘酸っぱさを彷彿とさせるセーラー服がのような衣装を着ていた。


外見的な色のイメージはほとんど変わらないが、ここまで連想させる出来事が違ってくるものなのか。


「これは私たちみんなで作った曲なんです」


そういえば関連動画に出てきてつい見てしまった動画でそんなことを言っていた気がする。


今回のライブでみんなで作った新曲をお披露目すると。


「それでは聞いてください」


その言葉と共に曲が始まった。


メンバーたちを次々と見やっていくといつものような激しい踊りではなく、まるで歌手がやるようなちょっとした手の動きくらいしかしていない。


時折立ち位置やフォーメーションを変えるために動くが、基本的にはみんな歌うことに集中していると言ったらいいのだろうか。


曲の内容はというと平凡な女子高生がトップアイドルになるまでを描いた、まるでその歌詞でアニメや映画の1本でも作れそうなベタなシンデレラストーリー。


でもそんな軽い言葉では表せないような彼女たち自身の言葉が乗っているからなのかずっしりとしたインパクトのあるものだった。


そんなこんなで曲は終わったわけだが、終始彼女らは「踊る」ことはなかった。


しかしその表情はみんな実に楽しそうで、まるで実際にそのシンデレラストーリーを体験したかのように感じるほど輝いて見えた。


「いいな、私もああやって輝きたい」


隣でボソッと安芸さんが呟いた。今のパフォーマンスを見てしまったらプリンセスに憧れるのも無理はないだろう。


アイドルたちのように輝けたらもしかしたら安芸さんは俺への依頼通りに幸せになれるのかもしれない。


でも俺の瞳には安芸さんはずっとずっと輝いて見えている。


「きっと輝けるよ」


俺も安芸さんにバレないようにそっと呟いた。


もちろん学校一の美少女であり、天使様である彼女が輝いて見えるのは当然のことなのだが、俺は自分の胸の奥底にあるそのもうひとつの理由があるように思えた。


でもそれはいくら探しても見つかることは無かった。


「本日は本当に本当にありがとうございました」


「ありがとうございました」


リーダーに続いてメンバーの残り全員が声を合わせて終わりの合図を告げ、それぞれ自分が入場した道から再び帰っていく。


俺たちは自分の推しに精一杯手を振った。気分的にはもう満月も空高くに登っている時間なのだが、ふと時計を見てもやはり4時前だ。


「じゃあ、私たちも帰ろっか」


「ああ、そうだな」


俺たちも姫芽さんの後ろに並んでドームから退出した。


「ふう、今日は楽しかったよ。姫芽誘ってくれてありがとね」


「いえいえ。私の趣味に付き合わせちゃってすみませんでした」


「俺からも楽しかったぞ。ありがとな」


「2人とも優しいね」

「俺らはね......。新しい推しもできちゃったわけだし、なんだかんだライブの雰囲気もすごく楽しそうだったし実際盛り上がれてよかった」


「私もコールとか緊張しちゃったけど、練習の成果発揮できて良かったな......」


「あはは、また来ましょうね」


姫芽さんが乾いた笑いを浮かべながら言う。


またライブ中は少し疲れているような様子も伺えた安芸さんだったが最終的には楽しんでくれていたようで良かった。


俺が提案したわけじゃ無いが彼女が幸せになることにも1歩近づけた気がした。

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