-第61話-ライブ
フリフリのドレスをモチーフにしたような白い衣装に身を包んだ彼女らは、今日のためにいっぱい練習してきたのであろうキレキレであるがそれでいて可愛さも残っている踊りを、数万いる観衆に向けて見せている。それはサビを終えても2番を終えても変わらずに輝いているように見えた。
この曲は俺の知らない曲であったから、どこで終わるんだという疑問を胸に抱きながら聞いていた。
周りを見ても耳を澄ましてもコールをしている人は誰一人としていなかったので、これはそういう曲なのだろう。
「はーい、本日は私たちmis☆sionsのライブに来ていただきありがとうございます!」
アウトロも終わり静寂に包まれた場内に、突如パッとスポットライトがとある女の子に当たった。
それはこのグループのリーダーなわけなのだが、その子の言葉に合わせてファンたちがさっきまで抑えていた分オーバーに盛り上がる。
「ウォー」といつ場内を包み込む雄叫びさえも心地よく感じられるほどに、タイミングがきちんとあっていた。
「それでは一人一人紹介していきましょう!それでは!」
「はーい!みんな本当に今日も来てくれてありがとね!赤色担当アイリです!」
再び場内から歓声が上がる。
それに合わせペシりと右手を姫芽さんに軽く叩かれた。
忘れていたのだがここで一呼吸開けてからコールのようなものをするのがいつも通りと言っていた気がする。
「アイリたん今日も可愛いよー」
俺のタイミングは間違っていなかったらしく、俺の小さな声は周りの多くの声に打ち消され吸収されていった。
またベタなものだと思うが実際アイリさんは可愛いと思うし、そこを磨き続けているところがまた......。
俺すっかりハマっちゃってるじゃん......。
「はーいお次は......」
「はい!緑担当、みんなと一緒にライブ楽しんじゃうぞー!メイです!」
先程と同じように歓声が湧き上がるが、その中に俺の左隣から発せられているものはない。
安芸さんは大きな声を出すことに慣れてないのか、恥ずかしいのか分からないけれど、ぼーとステージを見つめている。
「安芸さん大丈夫?」
「う、うん、大丈夫。ちょっと慣れないだけだから」
そう言って彼女も他のファンらが一呼吸置いた後に発する決めゼリフのようなものを一緒に叫んでいた。
でもやっぱりどこか安芸さんが無理をしているように感じた。
その後は残りの2人のメンバーがこれまでの3人と同じように挨拶した。
そしてまた歌のパートに入ったわけだが2曲3曲と続けて知っている曲を歌っていたので、俺は思わずノリノリになって体を揺らしてみたり、安芸さん姫芽さんと一緒に周りのファンたちに混じって必死になって覚えたコールを叫んだりした。
安芸さんもしっかりと覚えこんでいてさすがは優等生だなと感じた。
俺は姫芽さんから送られてきた動画を全て見てコールの内容を覚えるのに相当な時間食われたので、時間の無い安芸さんが短時間で俺と同じだけ覚えているということはそれだけ能力が高いのだろう。
また曲と曲の合間のトークのところでは彼女たちの動画からは全く読み取れなかった絡みを見れたり、裏情報のようなものを入手出来りして少し嬉しかった。
他にもアイリさんが一発芸に挑戦するというバラエティチックな場面では、成功したときに姫芽さんが無意識なのか俺の手を握り上に一緒に上げて喜んでいたところを安芸さんが顔を膨らませ後ろ指を指してきたりと意外なこともあったが面白かった。
そうして楽しかったライブも終わりが近づいてきていた。




