-第59話-
「そういえば姫芽さんは何買うの?」
「私は色々買うけど、なんで?」
姫芽さんが不思議そうに顔を傾けながら尋ねてくる。
「いやだって、俺らはここに来るの初めてなわけだし何買っていいか分からないからね」
俺は言い切ると同時に同意を求めるように安芸さんの顔を覗き込む。
「そうだよ、姫芽。私も姫芽とお揃いのもの欲しいかもな」
「そう、ですか。お嬢様がそういうのなら全然教えますよ。もともと山口くんにはおすすめ教える予定だったし」
女子はお揃いという言葉に弱いんだろう。
安芸さんの言葉にすぐに反応して姫芽さんが語り始める。
「まずはTシャツかな。ほら周りみてみるとちらほらいるでしょ。なんか文字で色々書いてあって真ん中にキャラクターみたいのが描いてあるの着てる人」
言われてみれば確かに様々な色合いのTシャツだが構図が同じようなものを来ている人達が結構な割合でいる気がする。
「メンバーごとにTシャツがあるから自分の好きな子のやつを買ってねって感じかな。あとはサイリウムとか。ほら点灯させるタイミングが違うよって話の時に動画見せたでしょ?あんな感じでサイリウムも色が違うんだよ。まあみんなで同じ色使ってやるのもそれはそれで綺麗なんだけどね」
「なるほどな。そこは最低限買っておけと?」
「うん、そうかな。私はそこは消耗品だし来る度に買ってるかな。他にもポスターとかキーホルダーとか色々あるけどそこは買えとは強要しないけどね」
「なるほど。ありがとな姫芽さん」
「いいってことよ後輩」
「後輩って......」
仲良さそうにする俺と姫芽さんをジト目で見てくる安芸さん。
なんかその目にものすごくそそられるものがあったが秘密にしておこう。
「私も姫芽のおすすめ通りその2つを買ってみようかな」
「俺もそうするか」
こうして買うものも決まったところで、長い長い行列を俺たちは他愛もない話をしながら消化していくのだった。
列に並んでから10分ほどが経ったであろう時、俺らはやっとブースに入れた。
棚に満遍なく飾られた商品にはどれも可愛い感じに撮られたアイドルのメンバーの顔がプリントされていた。
俺と安芸さんはそれぞれアイリさんの赤、メイさんの緑と推しの色のTシャツとサイリウムをカゴに入れ、姫芽さんの物色が終わるのを待っていた。
姫芽さんは俺たちの同じように先程勧めて「消耗品」と語る商品の他にうちわやらパンフレットやらを着々と、高校生でありながら安芸家で使用人として働いている身のため経済的には余裕があるのか躊躇することなく自分のカゴに放り投げていっている。
その様子を見ていると俺も何か追加で買いたくなってくるので、周りをグルっと1周見て回ることにした。
なかなか興味が商品に湧くことはなかったのだが、一つだけ気になるものがあった。
「山口くん。それ買うの?」
「うーん、迷ってるんだよな」
「写真立てなんて売ってるんだね」
このライブの雰囲気にミスマッチなその商品は俺の目にはどういう訳かとりわけ魅力的に見えた。
小規模なアイドルであったらチェキなどを記念に入れるために使うのだろうが、こんな大きなドームでライブをするアイドルグループにそんなイベントはない。
結局俺はその謎の欲望に打ち勝つことは出来ず写真立てを買ってしまった。
一体なにに使うのか分からないが、隣で大きな袋を両手に持っている姫芽さんのことをみるとどこか安心してしまった。
昨日借りた少女漫画読んでたら甘々なラブコメが書きたくなってきました




