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-第56話-

『え、それはどういう......』


2分ほどで返って来たものの、既読がついてからいつもに比べて返信までの時間がものすごく長かったような気がした。


『さっきの動画みたでしょ?気になる人いたかなって。推しってやつ?』


『あー、なんだ。そういうことならメイちゃんって子かな』


メイさんって子は確かアイリさんの前に喋っていた人だと思う。


長く黒く艶やかなツインテールを双極に垂らし、アイリさんには及ばないと思うが、失礼かもしれないけれどそれでもメンバーの中ではアイリさんに次いで可愛い子だったと思う。


明るい喋り方をしていて好きなことはダンスといういかにもアイドルに適任だなと思ったことが印象に残っている。


アイリさんと同じようにこのメイさんもどこかで見たことがあるような気がするが俺がアイドルとパイプなんてあるわけないしきっと気のせいだろう。


『なるほどね』


『え、なに?』


『いや、なんでもない。姫芽さんに報告しとこうかなと思って』


『本当になんで姫芽は山口くんを通すの......』


『それは俺も分からないよ』


本当になんでか分からない。七不思議のうちの一つである。


俺はとりあえず姫芽さんに報告するために画面をスワイプして姫芽さんとのものに変えて、その旨を送った。また安芸さんとのものに戻して、しばらくやり取りを続けようと思った。


『あとはコールってやつとかを覚えた方がいいらしい。なんかファンがやる掛け声みたいなやつらしい』


『ほうほう。山口くんはもう覚えたの?』


『いや、俺も姫芽さんに言われて動画見て覚えようかなって思ってたところだ』


『せっかくだし一緒に覚える?』


安芸さんは恥ずかしがる素振りも声色から感じさせることも無く言った。


学校1の美少女と放課後に通話しながらアイドルのライブ見るってどういう状況だよ......。


第一メンバーによってコールが変わるらしいから安芸さんと一緒に練習することはできない。


『なんか推しによって変わるらしいんだよ』


『そっか、残念だな。でも私1人でやるのちょっとあれだし電話繋げたままでいい?』


安芸さんは諦めることもなくそう言った。で


も確かにいかにもオタクっぽいことを放課後に自分の部屋で1人でなるというのは、誰かに見られてないにしても恥ずかしさを感じるだろう。


そう考えると俺もなんか恥ずかしくなってきた。


結奈に聞こえたとしたら明日から目を合わせられる気がしないし。


『確かに、そう言われたら俺もなんか一緒にやりたくなってきた。時間はまだ大丈夫か?』


『うん。大丈夫だよ』


そうして俺たちは互いに自分の練習したいところをそれぞれの端末で見ながら、黙々とコールを呟いていた。


傍から見たらいかにもやばいやつらだが、通話を繋いでるというだけでどこか安心出来るような気がした。


『そう言えばなんで安芸さんメイはさんを気に入ったの?』


『うーん、なんとなくっちゃ何となくなんだけど、必死に努力してるって言う感じが伝わってくるって言うか』


安芸さんは好きな理由を語れて嬉しいのか、声をいつもより高くして言った。

学校の頂点に君臨する美少女努力する人が好きだなんていうのは意外すぎた。


『なるほどね。確かに努力できる人って憧れるよ』


『う、うんそうだよね。あ、私そろそろ落ちるね』


安芸さんはそういって俺になにか言わせることも無く通話終了を選択してしまっていた。

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