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-第55話-

「ああ、わかった。明日にでも言っておくわ」


「うん!ありがとね」


姫芽さんが嬉しそうな声で言ってきた。


まあせっかくいくイベントで安芸さんも楽しんでくれれば、俺としてもメリットが大きいだろう。


「じゃあ、切るな」


「うん。また明日ね」


「ああ、いろいろとありがとな。また明日」


そう言って俺は赤いボタンを押して通話を切って終わりにした。


女の子と「また明日」と言い合う日が来るとは思ってなかっただけに、今日は少しだけ嬉しかったような気がした。


姫芽さんとの通話を終えた俺は直ぐに電気を消して、眠りについた。


翌朝――こないだのように早いうちから結奈が起こしてくることもなく、俺は寂しく平常通りに鳴る目覚まし時計に起こされた。


朝ごはんをお母さんと一緒に食べ、1人寂しく登校していく。


最近は予定が詰まっていたから特に感じることもなかったけれど、やはり虚無の時間というのは恐ろしいものであり、色々と考えてしまうものである。


でもそれはいつものような自分の人生についてや、生きる意味なんて厨二病臭く生きづらそうなものではなくて、「安芸さんは動画見てくれるだろうか」というようなものや、「安芸さんはどの娘が好きなのだろう」のような明るいものであった。


放課後、昨日姫芽さんからメッセージが届いたくらいの時間。


俺はこの時間なら彼女たちは暇なのかと思い安芸さんにコンタクトを取るためRINEを開いた。


『安芸さん。昨日の件についてだけど姫芽さんからで伝言貰ったんだけどいいか』


『うん。別にいいけど、なんで直接姫芽は言ってこないの?山口くんが出てくるまでもないじゃん』


やはり予想通りすぐに安芸さんから返信があった。


『まあ、姫芽さんはバレてないと思っていたっぽいし、言いづらいらしいんだよ』


俺は姫芽さんを庇うように言った。


『うん。まああの子なにかと繊細だからね。わかった』

『この動画見ておいてくれないか?』


そのメッセージと共に俺は姫芽さんから昨日送られてきたリンクをそのままコピーして貼り付けて送る。


『これは?』


『今度ライブに行くアイドルのメンバーたちの自己紹介動画らしい。参考までに見といてって俺は言われた』


『わかった。暇な時見とくね』


『おう。よろしく』


とりあえず明日の朝にでも安芸さんに感想を聞いて見ようと思い、俺は結奈が先に帰宅していてテレビを見ていたリビングに向かって入った。


結奈とはやっぱり気まずいという訳では無いが、お互いどこか身が入っていないように上澄みの会話ばかりをしながらテレビをボーッと見ていた。


ティロンと軽快なリズムが突然俺の隣から聞こえた。


この音はもしやと思い、俺はふと自分のスマートフォンが置かれている方に手を伸ばし画面を付けた。


『お嬢様は見終わったぽいから誰が好きか聞いておいてくれないかな』


実際に見ているのなら自分で聞けばいいのいいのに、なんでわざわざ俺に聞いてくるんだよ......。


『ああ、わかった。聞いておくな』


『うん。ありがと』


まあここまで来たら姫芽さんに合わせるしかないなと思い、姫芽さんとのトーク画面を左にスワイプして、俺は安芸さんとの画面に切り替えた。


『安芸さん、好きな子っている?』

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