-第53話-同担拒否
『なるほどな。ありがとう』
『それで?山口くんはどの子が好きなの?』
あれか恋バナを聞いたんだったら自分も言えみたいなそういうノリか。
小学校の修学旅行の夜を思い出す。あの時好きな人なんていなかった俺は適当に仲の良い女子の名前を出したのだが、その人のことを「じゃがりこみたい」と言われたことを。
まあ苦い思い出だけど友達がいただけ幾分か対外的に見たら今よりはマシだろう。
『俺もやっぱりアイリさんかな』
『ふーん、そうなんだ。い、いいと思うよ』
俺は「推し」を揃えていれば無駄な争いは起こらないと思い、軽い気持ちで姫芽さんに合わせたのだが、姫芽さんの態度は想像とはすっかり違う素っ気ないものだった。
『どうしたんだ?』
『いや、なんでもないよ。それにしてもアイリたんか......。ま、まあ可愛いもんね』
やっぱりパッとしない文章だ。
何か隠しているような気がすると俺の勘が訴えている。
『姫芽さんと感性が被るなんて珍しいこともあるんだな』
『うん。奇遇だね』
やはりとても嬉しそうに思っているとは考えられない。
『姫芽さんなんか思うことがあるのか?』
『同担はちょっと.....』
『え?』
『いや、なんでもないよ』
『なんだよ......』
メッセージのやり取りに間が出来たので、同担という言葉を調べてみると「推し」が同じ人のことをさすらしい。
アイドルやアニメが好きな人が使う単語なのか。
推しが被ると嫌な気持ちになる人がいるとサジェストにあった「同担拒否」という言葉の概要として書かれていた。
まさに姫芽さんはそれなんだろう。
ちょっとやってしまったな。
これからも安芸さんを幸せにする補助役として良好な関係が築けるといいのだけど。
『いや、こうなったら仕方ない。だってアイリたん可愛いもんね。姫芽がいろはを教えこんであげるよ。電話かけてもいい?』
姫芽さんは状況が覆ることは無いと把握したのか、ガラッと態度を変えた。
どうやら「同担」として仲良くやっていこうという気持ちに切り替わったぽいな。
それにしても家に帰ってから誰かと話すのか......。
当然RINEでメッセージのやり取りをし始めた時も学校以降に人とコミュニケーションを取る事があるのかと感動したわけだが、メッセージと通話ではまた変わってくる。
安芸さんと関わってから驚きが尽きないな。
『ああ、大丈夫だぞ』
『うん。じゃあかけるね』
そのメッセージと同じタイミングに俺のスマートフォンが振動し始めた時。
いつもの「ティロン」という通知音とは違う軽快な音楽に合わせて、長く揺れている。
俺は応答と書かれた緑色のボタンを緊張しながら押した。
「もしもし、山口くん聞こえる?」
「ああ、俺はばっちりだ。姫芽こそ聞こえてるか?」
「うん。大丈夫だよ」
「なら良かった。安芸さんたちとは別なのか?」
「なんでお嬢様が?」
姫芽さんが不思議そうな声をあげた。
「いやだって使用人なわけだし、同じ家に住んでるんだろ」
「そうだけどこんな時間までやることないよ。呼ばれたら行くくらいで」
「そんなにお嬢様のことが気になるの?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど」
「なんだ、春の予感がしたんだけどな」
姫芽さんは至極残念そうに声を落とした。第一もう春は終わりかけだ。
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あとやっぱりサブタイトルつけたいので、今までのつけてない回もつけていこうと思います。




