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-第48話-

安芸さんたちとのカラオケや夜妹から抱きつかれたりと非日常だった俺の一日も、一晩寝ることによって日常へと帰化する。


日常というのだから朝、通学路で安芸さんを見受けても遠目から眺めたり、こちらを向いてくる気配を感じたら合わせて視線を逸らしたりと、昨日一緒にカラオケで遊んでいたとはまるで思えないような所業であったり、学校の授業中次はいつ出かけようと考えたりしていたのである。


さて、待ちに待った昼食の時間がやってきた。


別に俺は隣の席の恩師である林さんのようにご飯を食べることが生きがいになっているわけでも、幸せを感じるわけでもないが、それでも躁鬱な授業から解放され、自由な時間を過ごせるというだけで昼休みが待ち遠しく感じるものだ。


俺はいつものように屋上を目指して俺は2年生の教室がズラっと並ぶ廊下を歩いている。


この前のように安芸さんが告白されていて使えないということはないように願うばかりだ。


もちろん安芸さんが告白されて、彼氏が出来それだけで幸せになってくれるというのなら、俺はご役御免だしそれはそれでありがたいけれど。


「あ、姫芽さん」


見知った顔が通り過ぎて行ったので、思わず声をかけてしまった。


今までの俺だったら安芸さんの取り巻きに声をかけるなんてこと絶対にしなかったのだが、やはり昨日一緒に遊んだ相手に挨拶くらいしておかないとどこか裏切ったような気分を感じてしまう。


「ん?あ、っっ、山口くんか」


姫芽さんは慌てた様子で耳にかけていたイヤホンを外し応じようとしていたが、手元が落ち着かなかったのか持っていたスマートフォン共々地面に落としてしまった。


俺は咄嗟に手が出てしまったので、姫芽さんのスマートフォンを拾い、返そうとしたのだが、画面が目に映ってしまった。


俺は反射的に曲名と思われるそこに書かれていた文字を読み上げる。


「『萌えキュン』......」


「それ以上は言わないで!」


姫芽さんが必死な様子で俺の口を塞いでくる。


俺がそれに驚いている間に俺の手元から自分のスマートフォンを回収し、そのまま何事もなかったかのように話を始めた。


「山口くん偶然だね。あぅ.......」


いや前言撤回、話を始めようとしただけだった。


俺に見られたことが余程恥ずかしかったのか、思い出したかのように可愛らしい声を出した後俯いてしまった。


「俺は気にしてないから......」


「そういう問題じゃないの.......」


なんとか雰囲気を誤魔化そうとする俺に対し、女の子らしく恥ずかしがる姫芽さん。


2人の織り成す会話は噛み合うはずもなく。


「こないだカラオケで歌ってたし、もしかしたらって思ってたから」


「え、勘づかれてたの......」


あそこまで完璧に踊っていてファンじゃないとは到底思えないだろう。


「ほかの人たちにはバレてないよ......ね?」


「いや、全然バレててもおなしくないぞ。まああのメンツなら他の人に言うなんてことはないだろうけど」


「.......」


姫芽さんは完全に言葉を詰まらせた。


あれでバレてないと思うのは流石に爪が甘すぎる。


安芸さんと仲がいいのが納得できるレベルで。


「山口くんも他の人に言わないよね?」


「ああ、もちろん」


俺はそう言わざるを得なかった。

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